rainy
昇降口の屋根の下に滑り込んで、シャツの裾を力いっぱい絞った。これでもかというほど落ちていく雨雫と、これでもかというほどに浴びせられる視線。もちろんどっちも気持ちいいもんじゃなくて、早く教室に“ない”ものを確認したくて、早歩きで階段を上った。

「三井サン!?どうしたんスか、なんでびしょ濡れ!?」

いつも以上に髪の毛がくるんくるんの宮城につかまってため息。昨日傘忘れたんだよ、学校に。なんて半分嘘っぱちの説明をそそくさと済ませて通り抜けようとした先に、木暮の驚いた顔。背中には、風邪ひかないでくださいよー、なんていう間延びした宮城の声。前方には、どうした!?風邪ひくぞ!?なんて駆け寄ってくる木暮の姿。おふくろは1人で十分だ!
なんとか包囲網をくぐりぬけて、たどり着いた先でまた、ため息。


 ため息の火曜日


どうかしましたか?みたいな顔しやがってこの野郎。
そこには見間違うことのない、俺の、黒い傘が昨日のまま佇んでいた。雨が降ってるってのに、こいつは自らの仕事を放棄して一晩中教室の隅でのんびりしていたわけだ。俺の優しさと、苦労が水の泡というわけだ。

「お、オハヨ……大丈夫?」

驚いた顔のこいつは、何も知らねえでちくしょう。知らなくて当然なんだけど……。思い通りにいかないことだらけでイライラが募るばっかりなのに、こうして声をかけられて悔しくも嬉しくて。
わけのわからないくらいぐちゃぐちゃに絡まった気持ちに、本日何度目か知らないため息をついて、カバンからタオルを引っ張り出した。



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