rainy
次の日は、幸か不幸か朝から雨だった。傘を忘れる心配もない。つい最近買ったお気に入りの空色の傘をつかんで、家を出た。


 傘が鳴る火曜日


「おはよー。もう髪の毛くちゃくちゃ!雨はイヤだねー」
「雨女おはよ。昨日帰れた?」
「あれから1時間くらいのんびりしたんだけどね。止まなかったから濡れて帰ったよ」

もうサイアク!そう言って肩をすくめると、ちょうどその時にガラリと教室の扉が開いた。いつもなら気にも留めないその音に、クラスのみんなが目を向けた。音というよりは、そこに立ってた人に、だけれど。しばらくして、斜め後ろの席がガタンと揺れる。

「三井くん、お、おはよ。大丈夫?」
「あ、ハヨ。昨日学校に傘忘れちまってな」

ぽたり、ぽたり、と床に小さな水たまりが出来ていく。びしょ濡れの三井くんは、大きなカバンをごそごそと探ってスポーツタオルを引っ張り出した。


*

「雨、止まないねェ」
「そーね。雨女ゴメン。もう終わるから」
「はいはーい。ちゃっちゃとしちゃってー」

友人が日直の日誌を書き終わるのを待つ。いちばん窓際の席は窓を叩く雨音が大きいような気がした。カラフルないっぱいの傘が校門からあふれ出ていく。その中にゆらり、と背の高い三井くんの姿が見えた。3限目まで海の家のニイチャンみたく、頭にタオルを巻いていたびしょ濡れの三井くん。どこかで見たことあるような、どこにでもあるような、真っ黒のコウモリ傘を差した三井くん。

「日誌書けたー!おまたせ、帰ろ」
「うん、オッケー」

傘を広げて、昇降口を出た。傘の下は、バタバタとうるさい。




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