rainy
「三井ー、はやく部活行こうぜ」
「お、おう!ちょっと待ってくれ」
「あれ?お前なんでこんなとこで傘持ってんだ?」
「い、いや、雨降ってるから、忘れないようにと思ってな」

教室の後ろの扉を開けて、黒いジャンプ傘を壁に立て掛ける。教室のちょうど真ん中らへん、机に突っ伏すあいつをちらりと盗み見て、音が立たないように扉を閉めた。少し、心臓がバクバクする。

「お前、ヘンな奴だなー。昇降口の方が忘れなさそうなのに」
「え、あ、盗られたらどーする!」
「ハハッ、だれも花道の汚い落書き付きの傘なんて持って帰らないよ」
「そうか?」
「うん、だって俺の眼鏡マークの傘、盗られてないもん」

いまだに呑気に笑ってる木暮に、この気持ちがバレやしないかとひやひやしながらスポーツバッグを担ぎなおした。ホームルーム終わりに、あいつとあいつの友達の話を盗み聞きしました。困り果ててふて寝したあいつのために、教室に傘を置いてあげました。以上!なんて、こっぱずかしくて誰にも言えねえ。それでも、なんかしておきたくて。



わざと忘れた月曜日




8時。部活終了。暗い空に広がるのは曇り空でも、雨なんて降ってない。柄にガムテープがぐるぐる巻かれた傘で、花道と宮城がふらふらチャンバラしながら校門を出て行った。――ああっ!俺の天才傘が折れた!――宮城!桜木!怪我でもしたらどうする!

「おおー、赤木が吠えた。近所迷惑なやつめ」
「おーい!三井ー」
「あ?んだよ木暮」
「お前、傘はいいのか?明日雨かもしれないぞ」
「ハハッ、お前は俺のおふくろかよ」

空は曇天でも、心は晴れやかだった。雨に困ってふて寝したあいつは、俺の傘に気づいただろうか。もし気づいてたら――なんて考えたら、口元がゆるんだ。


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