rainy
――本州全土にかけて停滞している梅雨前線の影響で、神奈川も影響を受けると思われます。
――県南部の低気圧も気になりますね。急な雨なんかにも注意が必要ですか?
――そうなんです。場合によっては1週間ほどじめじめとした天気が続くかもしれません。


1週間じめじめって、女の子のデリケートな日々じゃないんだから。心の中で小っちゃく突っ込んで、目玉焼きをかき込んだ。牛乳を飲み干してスクールバッグをつかむ。外はスズメのなく、薄い青空だった。


びしょぬれの月曜日



「バカだー!ホントバカだわ!!」
「仕方ないよ。朝は降ってなかったんだから」
「でもちゃんと天気予報見てから家でたんだよ!?お天気おねえさんにツッコミ入れて学校来たんだよ!?」
「ツッコみきれないよ雨女」

ごめん、バイトあるから今日急がなくちゃ。
そう言って友人は下校してしまった。傘 を さ し て 。
5限から曇りだして、ホームルームはすでにアウトだった。頼れる友達はみんな部活やらバイトやらで頼れなくなった。頼れるのは神様だけ。神様仏様、どうかこの雨を止ませてください。なんて、こんなので止んだら天気予報なんて必要ないんだけど。

「解決できるのは時間のみ、か」

誰も聞いてないのにちょっとカッコつけて、でも超小声でつぶやいた。机に突っ伏して、目を閉じる。次に目を開けた時に雨が止んでたらいいなあ、なんて。

まあ、止んでないんだけどね。仕方なく席を立った。残された選択肢は「濡れて帰る」のみ。まあ、1年に1度くらい仕方ない。と、教室の後ろの扉を目指す。目を疑った。神 様 は い た の だ !なんてね。
視界に飛び込んだ黒い大きな傘に、目を輝かせて駆け寄った。しかし、今この天にも昇るような気持ちは、その傘の柄にスルスルと解かれて消え去った。

「コトブキ」

黒かっただろう傘の柄にはガムテープが、それはもう怨念でもこもっているかのようにぐるぐるぐるぐると巻かれて、その上からは異常にデカくてきたない「寿」の文字。何これ、振ったら小判でも出るの?
所持品だとでもいう主張なのかな……それにしても、ダサい。
少しの背徳感と、大きな大きな女子高生のプライドがあいまって、わたしは「濡れて帰る」という選択を迷いもなく実行した。


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