rainy
「雨女ー、オハヨー。昨日帰れた?」
「あーっ!ちょっとねぇ聞いて!ホントにラッキーだったの!」
「えー?何?」
「あのね!困ってたら三井くんが折り畳み傘貸してくれてねっ!あっ!しまった……三井くんの折り畳み傘忘れちゃった……ま、大丈夫だよね!今日晴れてるし!それでね、じゃじゃーん!わたしもマイ折り畳み傘を携えることに……」
「雨女、それ、本当?」
「えっ?」
「昨日、委員会終わって帰るとき、びしょ濡れで走って帰る三井くん見たんだけど……」


 嵐の金曜日


友達の話を聞いて、一気に汗が噴き出した。どうしよう、どうしよう、どうしよう。とりあえず三井くんに謝るべきか、でも三井くんが自分の傘ないなんて知らなかったし……いや、いやいや!今はそんな正論を言っている場合じゃなくて!どうしよう、どうしよう、どうしよう――

「あ、雨野さんオハヨー。昨日は濡れずに帰れたか?」

突如、背後から掛けられる声。びっくりして跳ね上がる身体。振り向くとそこには、ニカ、と笑う三井くん。どうしよう、どうしよう!

「どうしよう!」
「えっ?」
「ど、どうしよう三井くん!私てっきり三井くん2本傘持ってると思ってて、それで、その、あっ、ごめんなさい!!」
「えっ、何?俺が昨日濡れて帰ったこと知ってんの?」
「い、今、友達から聞いて……」

本当にごめん、と頭を下げると、ひといき遅れて続いたのは大きな笑い声。びっくりして顔をあげると、眉を下げて豪快に笑う三井くんの姿があった。いつの間にか友達は自分の席に戻っていて、わたしと目が合うと、小さく肩をすくめた。

「いやいや、全然雨野さん悪くないから。部のヤツがふざけてて壊したんだ。だからほんと気にすんな」
「でも……」
「いいから。俺風邪ひかないし!雨野さんが濡れなくてよかったよ」

そう言って、急に目を逸らした三井くんを見て思い出した。三井くんの折り畳み傘、今日持ってきてない。これも、謝らなくちゃ。

「あと、その、ごめん。三井くんの折り畳み傘、持ってくんの忘れちゃって……」
「今日?ああ、ダイジョーブ、晴れてるし」
「本当に、何から何までご迷惑をおかけして……」
「ハハハッ!なんだよそれ、って、あ」

にわかに暗くなる窓の外。そしてうるさくなる窓の外。蛇口を目一杯開いた水流のように、勢いよく生徒が玄関に駆け込んでいて、空もまた、水をこぼしていた。

「えっ、雨!?嘘!」
「あー、降ってきたなぁ」
「そんな!ちょっと、や、止めーっ!止んでおくれよーっ!」

またも汗を流して焦る私を尻目に、三井くんは大笑い。だれのせいで、だれのために焦ってると思ってるんだ!なんて言えなくて、わたしはただただごめんと謝った。お願いだから、下校までには止んでおくれ!!


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