覚める、 [ 34/38 ]

なんとなく、目が覚めた。みるみるうちに頭が目覚めて働き出して、どうでもいいことが頭をぐるぐる駆け回る。
夜空のカーテン。星屑のランプ。夜の帷。
表現は色々あるけれど、今、この夜はなんだろうか、なんて考えながら、すやすやと眠る端正な顔立ちを眺めてみた。そんなことじゃ答えは出ない。出すつもりもないけれど。

睫毛ながいなぁ。肌きれいだなぁ。

人差し指で、少しだけいたずら。つんつく。つんつく。

「うお、うぉおおお!?」

さ、触れる!睫毛、触れる!
声を殺して感嘆。他人の睫毛なんて初めて触った、かもしれない。ながいなぁ。いいなぁ。つん、つくつん。


にわかにうるさくなる窓の外。あー、ゲリラ豪雨?だだだだだ、と雨粒が窓をたたく。星屑の大泣きの涙か。流れ星の汗か。はたまた月のおし……ナンデモナイ。

「ん、んぅ……」
「あ、宗一郎?起きた?」
「……何時?」
「うーん、四時くらいかな」

……なんで起きてるのさ……?
寝起きの人って本当にむにゃむにゃ喋るんだ。むにゃむにゃの宗一郎はまだむにゃむにゃを続ける。

「何、うるさいの、雨?」
「うん、今降ってきたとこ。ゲリラ豪雨」
「くそ、起こされた、ってわけか」
「そうみたい」

ぎゅう、と目をつむって、ごそごそ、と身動ぎをして。落ち着いた宗一郎の右手は、わたしの背中に。

「寝る?」
「うん」
「うるさいの、寝れる?」
「寝る、から花子も、静かに」
「うん、わかった」

わたしもごそごそ身動ぎ。宗一郎の胸におでこを宛てて。どくん、どくん、どくん。雨なんかよりずっとうるさくて、冴えた頭をもっともっと冴えさせた。ネレナイ。

「宗一郎」
「……なに」
「寝れない」
「寝る努力をしなさい」
「宗一郎の心臓の音が気になって寝れない」
「寝ろ、やめてつんつんするな」

ねーれーなーいーのー。もごもごとそう告げる。いつのまにか宗一郎はむにゃむにゃじゃなくなっている。わたしの背中をこつんと叩いて寝ろ、と一括。

「ふぁ……、あ、あくびでた」
「はい、上出来。眠気なんてすぐ来るだろう?」
「うん、寝れそう。おやすみ」
「おやすみ」

雨は小雨に。宗一郎の心臓の音は心地いい音に。突如襲ってきた眠気に白旗を降る。

「……花子」
「……寝る」
「寝れなくなった。花子の髪の毛こそばい、気になって寝れない」
「………………すぅ、」



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