鉄筋コンクリート [ 12/38 ]

「わはは!この天才桜木がいれば夢なんかじゃ終わらせねえ!」
「きゃー花道かっこいい」
「花子、花子、棒読みがすごい」
「洋平だって無反応のくせにー」
「ぐ……オメーら冷てぇよ」

初夏の昼休み、屋上にて。桜木花道は「IH」とでかでかと書かれた紙(数学の課題)を握りしめた。それを見て水戸洋平が上手くフォローする。山田花子は未だにげらげらと笑っていた。天高くからぎらぎらと照りつける太陽のせいで、制服のシャツはじっとりと背中に張り付いて不愉快だったけれど、そんなことを忘れるほどに愉快に笑いあう。

「いたいたー!おーい、お前らー!」
「おお、来たな呼び出し三人組」
「うるせー洋平。んでお前らは呼び出しくらってねんだよ、ったくよー」
「チュウ、抑えて抑えて」

教員からの呼び出しから解放されたばっかりの、野間、大楠、高宮の3人はまだ不愉快な気分のままだった。屋上に照りつける太陽に、ストレス発散とばかりに暴言を吐き、背中に張り付くシャツをなんとかしようとパタパタ煽いだ。ひんやりとはするが、それでも湿度が気持ち悪い。

「あれ、花道何持ってんの?」

ガラガラ声で高宮が訪ねる。野間の目が隅に印刷された「数学」の文字をとらえた。そして野間自身は驚愕する。花道が勉強に関するものを持っている!と。

「ちげーよバカ!フフフ、裏を見なさい、裏を」

また始まったよ、と顔を見合わせる山田と水戸。肩をすくめて、赤い頭の大きな背中を眺めた。少し皺の寄った数学のプリントの裏を、遅れてやってきた3人の目の前につきつけて、花道はわははと笑う。

「あい、えいち?」
「くっきんぐ?」
「ひいたあ?」

バカ野郎!と花道の鉄拳が3人の頭にリズミカルに落ちる。インターハイだ!イ・ン・タ・ア・ハ・イ!!わははと笑う5人に、また悔しそうにプリントを握りしめる花道。それからびりびりと細かくそれを引き裂いた。「あーあー、そんなことしちゃっていいの?」山田が問うと、花道が胸を張った。

「いーんだよ、インターハイなんぞ俺が蹴散らしてやる!」

いいぞー花道!高宮のガラガラ声が響く。野間と大楠が下品に囃し立てた。太陽は未だぎらぎらと五月蝿く、ついでに5限の始まりを告げるチャイムも鳴り響いていた。それでも6人は屋上で愉快に笑いあう。遅れてきた3人も、背中に張り付くシャツのことはすっかり忘れていた。








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