おおかみがにげそうや [ 13/38 ]

「あ」
「ん?どーしたん?」
「そういやお前、セックスしてるときれっちゃん言うんやめえ」

ぶひい、と花子はいちごミルクのパックから伸びるストローを咥えたままむせた。なんやねん、きたないのぉ。そう言うて隣に座る花子の背中をさする。ストローを放した花子にぎろりと睨まれた。なんやねん、怖あ。

「急に何言うねんアホお!ここ中庭やで!」
「いや、思い出してん。言お思てたこと。忘れる前に言うとかな」
「忘れろや!なんやねんもう。ってか言うてへんし!」

きょろきょろと周りを見渡しとる。まあ、確かに女やったらこんくらい恥ずかしなるか。こいつも女やっちゅうことやな、よかったよかった。ってか言うてへんしてなんやねん。がっつり言うとるわアホかこいつ。

「言うとるっちゅうねん。おまえ本気で言うてるんか?」
「ああああああほかっ!そんなんええねん!なんで今言うねん!」
「いや、急に子供ん時みたいに呼ばれたらちょっと萎えんねん」
「萎え……うち、ほんまに言うてる?ていうかうち烈の名前呼んでんのん?」

うわなんや急にしおらしなりよった。顔真っ赤やし、そんななるんやったら聞くなよ。なんやねんちょっと可愛いやんけ。っていうか、名前呼んどることわかっとらんのかいな。呼んどるわ。がっつり呼んどる。

「花子、おまえさあ」
「な、なんよ」
「(うわ、真っ赤)つよし、て意識して呼んどるんか?いつも」
「えっ!……わかる?」
「まじか」
「まじや……うわー最悪や。ごめん烈」

なんで謝るん?だって烈、れっちゃんって呼ばれんの嫌がっとったし。
花子がぼそぼそなんか言うとった。いつもの口悪いこいつどこいってん。中庭やぞここ。お昼時やぞ。なんでこんな恥ずかしいこと喋っとんねん俺ら。あ、俺のせいか。

「でもな、ちっちゃいときからずっとれっちゃんって呼んどったからな、つよし、て呼ぶのちょっと恥ずかしねん。ごめん、その、な、萎えとるとか知らんかった」
「いや、そんなお前」
「はよ慣れるわ。もうれっちゃんって言わへんよおにする」

ってか、恥ずかしわ!とか言うて、花子はいちごミルク一気に飲み干しよった。いやもうこれ、逆にれっちゃん言われたら俺やばい。というかもうすでに今やばい。これ学校違たら俺確実にアレやわ。オオカミや。ちょっとマジで、はよ部活かなんかで発散しな、ほんまに、な、冗談キツいで。




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