日曜日 [ 17/38 ]

「花子ー」
「……」
「なあ、花子ってばー」
「…………」
「おい、聞けよ」
「聞いてるってば」
「わけが、わからん」

三井はそう言って、理解しようとすることをやめた。あぐらをかいて前かがみだった身体を、後ろで手を組んでぐぐぐ、と伸ばした。三井の部屋の小さなブラウン管で小一時間ほど見続けた話題のサスペンス映画は今ちょうど、起承転結で言うところの転なのかもしれない、と三井は思った。主人公が画面の中を走る。しかし、たくさんの登場人物と、見分けのつかない外国人の顔のせいで、だれがワルモノで、だれがイイモノなのか、真犯人は?真相は?ぜんぶこんがらがって、三井には何が何だかわからなかった。

「なあ花子、あのマジックジョンソンみたいのはワルモンか?」
「……いや」
「アイツがワルモンじゃないってことは、俺の唯一理解しそうだった部分が崩壊した。今」
「……わからないんじゃないかな、まだ」

三井はすでに集中力を切らして、上半身を仰向けにベッドに預けていた。もう画面を見ようとはしない。一方で花子はまだ、クッションを抱えた体育座りでじっと画面を見つめる。主人公が曲がり角を曲がり、上がった息を整えている。とりあえず、一件落着と言ったところだ。

「ちょっと花子今んとこまでわかりやすく説明してくれね?」
「……」
「……なあ、お前ひょっとして」
「ぎくり」
「理解できてねーの?」

三井は隣に座る花子の顔を覗き込んだ。三井と目を合わせまいと、意地になってテレビ画面を見つめる花子の頬はりんごのようになっていて、それを見て三井はにんまりと意地悪く笑った。

「いや、もうちょっと見ないと、わからないかなー」
「ずっとイイモンっぽかったあの白人は本当にイイモンなのか」
「えっ!?あの人はイイモンでしょ!」
「そーか?なんか怪しいけどな」
「そうかな……?」
「いや、俺はもう理解するのを投げ出したからわからないからな」

そしてなんとか、惰性で、映画を見切った。三井は例の白人が黒幕だったことだけを理解し、再びにんまりと笑った。花子にもう一度説明しろと言うと、黒幕の白人の名前と、主人公は冤罪を掛けられていた、とだけ答えた。

「それくらいわかってんだけど」
「え」
「黒幕がアイツだったのは理解した。でも主人公の冤罪は、理解っつーか、前提じゃね?そういう映画だろ」
「わかった!わかった!寿うるさい、もう。どうせわかんなかったてば!」
「なんで怒ってんの?」
「もう別のことしよう!映画おしまい!おしゃべり!お菓子食べよう!」
「セックスする?イテェ!!」

ばか!と三井を勢いよく殴って花子は四つん這いでビデオデッキに近づいた。取り出しボタンを押すと、機械音とともにビデオテープが吐き出される。花子はミニスカートだった。三井はパンツ見えないかなあと思った。







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