いちにちのはじまり [ 38/38 ]

九月一日。まだ残暑とすら言えないような、フライパンの上のような、じりじりと太陽照りつける日。過去の栄光、中学MVPの称号を引っ提げた三井寿はひとり、湘北高校への道のりを辿っていた。

今日からまた、きつい練習の猛攻かァ。

いくら競技が好きでも、連日のきつい練習が嫌になるのは体育会系の性。じりじりとうるさい熱気も合間って、スポーツバッグを担いだ体が一段と重くなる。

「おはようございます、三井先輩」
「あ、びっくりした」
「時間ギリギリ、遅れても知りませんよー」

チリンチリンと軽快に車輪を滑らせて追い抜いていった後輩マネージャーの背中を見ながら、おっさんのごとく、先輩プレーヤーの三井寿は呟いた。

「俺もチャリ通しようかな……」

高校生活残り一学期分。熱気の絡み付く足を湘北高校体育館へと運びながら、三井寿は考えるのだった。








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