好きだ! [ 23/38 ]

「終わっちゃいましたね」
「うん」
「先輩、3年間カッコよかったです」
「ハハ、2年分しか知らないだろ。それに俺は何もしてないよ」
「またそうやって謙遜する」
「……謙遜かあ。そう言われると嬉しいよ」

そう言って木暮はにっこりと笑った。対照的にむすっと頬を膨らませたのは、木暮の1つ下の花子。欄干に預けた体は、東へ向かって長い影を落としていた。

「先輩は謙遜するようなプレーヤーじゃなかったです!」

凛と響く大きな声に、木暮はぎょっとして花子を見た。キッと木暮を見つめる2つの瞳が痛いほどにまっすぐで、自然とため息が漏れる。そのため息に導かれるように、ぽとりぽとりと言葉を紡いだ。

「本当は誇らしく思ってるよ」
「……え?」
「聞いてくれる?」

今度は木暮がまっすぐと見つめ返す番だった。

「流川や三井のスタミナ切れで交代すれば攻撃力はがた落ち。桜木のファイブファウルで入ればリバウンド力ががた落ちだった。それでも、交代前より劣勢になるような状況は作ったことなかったって思ってる。拮抗を保つのが俺の役目。コートに残った4人が、今までと同じ動きでプレー出来るようにするのが俺の役目。それが出来たのは、俺だけっていう自信はあったんだよ」

言ってる意味わかる?と続けて、木暮は眉を下げて笑った。ワンテンポ遅れて、花子も静かに微笑む。

「これが、俺の精一杯の自惚れ」
「じゃあ、文句は?」
「え?」
「まだ言いたいことあるでしょう?叫んでいいですよ。わたし、耳塞いでてあげますから」

返事を聞くよりも早く、花子は自身の両耳を手のひらで覆った。一瞬ひるんだ木暮も困ったように笑って、かなわないなあ、とぼそり、呟いた。そして、手のひらでメガホンを作る。欄干から身を乗り出して、青春ドラマよろしく、太陽に向かって叫んだ。

「俺だってスタメン欲しかったんだからなーっ!ルーキーどものバカ野郎!!」

鼻の付け根がツンと痛んだような気がした。それでも木暮は泣かなかった。笑って花子を見ると、擽ったそうな笑顔で目を細めている。耳を塞いでいるくせに、と聞こえないように悪態をついて、彼は、もう一度大きく息を吸った。花子が太陽のように目を丸くするのは、あと5秒後のこと。

「それから――」








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