マリッジ! [ 30/38 ]

「クッソー……流川のヤロー、生意気なー……」
「同感だぜ花道……チームメイトを差し置いてあんにゃろう」
「こうなったら披露宴荒らしてやろうぜ!花道!三井サン!」

ガツン、と三つのこぶしが、決意と共にぶつかった。
神奈川県、とあるホテルの大広間の扉を前に、3人のいかつい男がメラメラと嫉妬の炎を燃やす。かつてのチームメイトが結婚するとあって、冷やかし半分に披露宴会場に来た三井、宮城、そして桜木の3人の楽しげな盛り上がりムードは、30分前に顔を見せた主役、流川楓によって打ち砕かれていた。

「あんにゃろう、何が『男3人』だ!チクショウ!」
「大体、知り合いの結婚式にカノジョ連れてくるかっつーの!いねェけど!」
「だー!ムカつくー!!なぜあんな狐ヤローにお嫁サンができてこの天才桜木にはァ……ぬぉ!流川!」

再び現れた憎き流川楓に、3人は、それはかつての山王工業戦を彷彿とさせるかのようなシンクロを見せ、ギロリとにらみをきかせる。しかし、そこへ流川の後ろからひょっこりと現れた小さな陰に、3人の眉間の皺はきれいさっぱり、そしてあっけなくほどかれた。

「あ!楓の高校のチームメイトの方ですか?来てくださってありがとうございます!わたし山田花子です!」
「おい」
「えっ?何?」
「……山田じゃねぇ……」
「ああ!そうだった!流川花子です!……えへへ、照れますね」

ピタリ。え、マジかよ。これが、流川のオヨメサン……
オ ヨ メ サ ン ッ テ コ ン ナ ニ カ ワ イ イ ノ ?
顔面グーパンのような衝撃とともに、しばしのフリーズ。そして、ハッと我に返った桜木がぎゅっと拳を握る。

「おのれるか――」
「花子、着替え行くんだろ?」
「あっ!うん!そうだね、そろそろ急がなくちゃ……それじゃあみなさん、また後で」

ぺこり、とお辞儀。にっこり、と笑顔。そして再びフリーズする3人。
だ、ダメだ……あんな純情純粋幸福オーラ見せられちゃあ……
披露宴荒らすなんてとんでもないぜ、憲法に違反するぜ、死刑だぜ……
オヨメサン恐ルベシ……
敗北感に打ちひしがれる3人のどんよりオーラを感じとってか、5メートルほど先を歩いていた流川が不意に振り返った。反射的に「む」と眉間に皺をよせた3人を見て、勝者のヒトコト。

「どあほう」

3人は再び、惨敗という2文字に打ちひしがれた。








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