二つ名の由来



ここは校舎裏にある体育倉庫
木材やU字土管が積み上げられたその場所に、地上で股を大きく開きしゃがみ込んだ戸田と積荷の1番上に足を組んで頬杖をついている松岡の姿があった
「ほら」
「おう!」
戸田は松岡から投げられた煙草を咥えると慣れた手付きで火をつける
「ふぅ…やっぱり朝の一服は格別だな」
足元にある缶ビールに軽く叩きつけて灰を落とし、口唇に咥えたまま話を続けた
「そういえばさ、呼ばれたの今日じゃん?」
「あぁ」
「向こう何人?」
「さぁ…まっ心配ないと―」

 スーーーパリン!

「僕は考えてるさ」
松岡は積荷の中に混ざっていた弓道部の弓を素手で投げ、校舎屋上の窓ガラスに命中させる
「新しい鉄パイプも揃えないといけないしね」
「そうだな」
「さてと…資金でも集めにいくか」
地上に降り立った松岡は下駄の歯に仕込ませている鉛の状態を確認すると、戸田に声をかけ繁華街へ繰り出していった


*


「そろそろ時間だ」
喧嘩はもちろん素手が基本
2人は手持ちの武器を積荷の中に隠し、呼び出された広場へ向った
そこには高校生と思われる人物が何人も集まり黒い塊をつくっていた
中にはバットを肩に乗せている輩も1人2人…はいる
ガラの悪い生徒達は背中合わせにした戸田と松岡の周りを囲むように集まり始めた
「ふんっルールも知らねぇ奴等だぜ」
「なんだと!!」
口を開いた戸田の胸元を一回り大きい生徒がいきなり掴んできた
「ふんっ!」
「なっなに!!」
しかし、戸田は背負い投げを1本きれいにきめ、その反動を使い広場のブロック塀に飛び乗った
容貌からは考えられない身体能力を見せつけられた集団は呆然と立ち尽くすだけだった
「どっからでもかかってこいよ!」
戸田は小高い丘にそそり立ち鬣を靡かせる獅子のように赤褐色の髪を靡かせ、高飛車な態度を見せつけていた

「女々しい顔だな!」
そういって松岡に近寄ってきた背の高い1人の輩
「ん?上から見下ろすんじゃないぜ!」
「なっ!」
松岡は輩の顔をいとも簡単に踏み台にし身体を宙で一回転させ着地した
魅了という名の罠を仕掛ける牡丹のように、少し崩れた踏み台を地上から見上げなおした


二人にとってこんなことは日常茶飯事だった
戦利品でパンを買い、広場に集まってきた野良猫と一緒に夕飯を軽く済ませた後、一緒に暮らす住まいへと帰っていった


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