移り変わり





月が綺麗だなぁ…


あの丸い月を見てるといつも思うことがあるんです


美味しそうだなって


貝も美味しいけど…


他の食べ物もきっと美味しいんだと思う!


ん〜♪





ZZzzzz…





プカ…))))


)))))


)


**


「あれ?  ラッコ?」


ある1人の漁師が深夜の海水に浮かぶ1匹の生物を発見した
瞳を閉じ波の流れに身を任せ、ゆらゆらと毛皮を靡かせている―
そんなぬいぐるみのようなその生物に、これからある危機が起ころうとしていた


「お前は気楽でいいな…私はこのまま―」


何も獲れない日々が続いたら、どう生きていけばいいのやら…
甲板には、大量の海草と昆布の山が積もる毎日
ふぅ…
たまにはタンパク質で腹を満たしたいものだ
噛んだ時に、こう…歯ごたえがあって―


!!
お前…ひっとして―


「…食べれ…られるのか」


いやいや…駄目だ!
こんな可愛い動物を食していいはずが無い
……


「尻尾だけとか…」


んんぉぉぉおお!!
私の心の悪がそう叫んでいる!
やめてくれっ〜!!


漁師・水木は両手で頭を支え、夜の静寂を破るように唸り声を上げた
ボートの周囲に広がった波紋は、眠りの浅い生物の覚醒を助長し


「…はっ」


 チャプン…


気が付いた頃には、水木の正面に来ていた
海面からひょっこり顔を出し、顔を洗うような仕草をしている


「悪いな…私が起こしてしまったのか」


海面から抱き上げようを両手を差し出したら、見事に逃げられてしまった
暗い海水から、薄茶色の体毛が見え隠れしている
少し警戒心が強い生物のようだ


「 なんだ?」


影がもう一つ見える
じわじわとこちら―というか、ラッコの方に近づいているその長い影


水面から背ビレが現れた


その正体は


近海の主 サメ


流石にあのラッコも気が付いたのか、目を見開いて泳ぎだした
見るからにとても必死で、自然と水木の拳にも力が入る
しかしこの時、水木はある失態をしていたことに気付いていなかった
ラッコの進行方向には、底引き網が設置されていたままで


つまり 行き止まりなのだ


**


大変です!


サメだ!サメが僕を襲ってきます


さっきは人間に襲われそうになったし


ちょっと危ない場所ですっ ))))


うわっ!


急に前に進めなくなってしまいましたっ


これは…網だ


ガジガジ……


うぅ…僕の歯では壊せそうにありません


……


生き残れたら


松岡さんに前歯、借りよう


(>_<)
⊃祈⊂


**


「うわっ」


時を同じくして、ボートでも異変が起こっていた
海流があるわけでもないのに、急にボートの後方が重くなったのだ


「網だ 網に何かが引っかかったんだな」


急いで後方に向かうと、水中の網には必死で逃げていたさっきのラッコがいた


その後にはスピードを抑えたサメ
きっと狙いを定めたのだろう
慎重に…その距離を縮め始めていた
狙われた獲物は、まるで人間が祈りを捧げるよう、両前脚を組み、歯を食いしばっている表情をしていた
鋭い歯をむき出しにしいた主が、電光石火の早業を仕掛けようとした―


その時だった


水木は手に取った銛を、寸分の狂いも無く急所に打ち込んだ


波の静かな音をしかと聞き遂げた後、その銛を手繰り寄せ甲板に引き上げた
それから、いつもと違い重みのある網を引き寄せる
ボートの周りは、主の体液が海水と交じり独特の生臭さを発していた


九死に一生を得たラッコは、水木お手製の網から優しく取り外されると海水のシャワーで身体を洗い流した
水木は船内からタオルを持ってきて、その立派な体毛を拭こうとしたら―
その生物はブルブルと頭を振り、臭いや汚れだらけの水しぶきを命の恩人に捧げた
そんなことにも係わらず、水木は


「お前は幸運のラッコだ!」


と、赤ん坊のように抱き寄せタオルで頭を撫で始めた


*


僕の祈りは、何故か人間が叶えてくれた


そういえば…


最近、僕の周りに来る人間に悪い人がいない気がする


美味しい餌をくれるし





改心したのかな…


*


「ほら、早く皆の元へ戻るんだぞ?」
「……クォ」


ラッコは最後に一言だけ鳴き、水木の手によって海に戻されたのだが


「早く行かないのか?」


いつまでたってもその場を去ろうとしなかった
それもずっと水木の顔を見つめたままで―
水木は色々と考えた結果、こう答えを導きだした


「そういえば、さっきの褒美をやってなかったな」


と、言って大量の海草と少し鮮度の落ちた雲丹を1個渡した
すると、どうだろう
ラッコは喜んだのか、バシャバシャと波を立てボートから離れていった


「ふぅ…私もこれでやっと家に帰れる」


甲板を占領している獲物に向かってそう呟き、数日振りに心地よい寝床に就くことができた水木であった


**


本当にいい人間なのか、この目で確かめようとしたんだ


そしたら、なんかいがいがするものを渡され―!


雲丹だ!


雲丹っもらえた!


あと、海草もv


この人間…合格です!


あっ


松岡さん起きてるかな…


おすそ分けしようっとv


僕は一足先に、この海草を…


モキュモキュ…


…v


はっ…!


もしかしたら、海草の方が美味しいかもしれない……






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