【憧れ】





二部くんは僕の後に採用になった飼育員で
たしか…今年で3年目だったかな
彼の発言力はいつも飼育員の心を掴むんだ
それなりの活躍もしてくれるし

だから
僕の仕事の一部を任せてもいいかなって思って ご飯に誘ったんだ

そしたら…休んじゃったんだよね

食事中は うんうんって頷いてくれてたけど
やっぱり 嫌だったのかぁ
今の業務でも充分大変だからな


―よしっと
照明消したし 帰ろう


**


ピンポーン


…ガチャ


「!!?」
「うわっ!二部くん 目が真っ赤じゃないか!!」
「一部くん…なん…で?」
「心配で来たんだ 中に入れてくれるかい?」
「…だ」
「え?」
「嫌だ!!」


ドン!


「どうしたんだよ!」
「だって…」


…グスン


「だって一部くん!飼育員辞めるんだろ?」
「は?」
「はぁ!?じゃないさ!!あんな勝手なこと言って!」


食事の最後に言ってた!
イルカショーの担当を引き受けてほしいって!
それ一部くんの担当だろ!


「そうだけど そういう意味じゃ―」
「じゃどういう意味だ!!!!」


ギュ…


「一緒に担当するってことさ」
「!!」


一緒にイルカショーをやるんだ
イルカたちに負けないくらい
僕たちの息ぴったりな演技を観客に見せようよ!


「二部くん?」
「…なんだよ…」


僕の勘違いだったのか


「もしかして 泣―」
「外寒いだろ!早く中に入って!!ほら!」
「う…うん」


様が済んだのに二部くんの部屋に上がって 僕が差し入れに買ってきたおでんを一緒に食べ始めた


「今日泊まってくよね?朝早いし!」
「お願いしようかな」
「よかったぁ〜じゃ 先にお風呂いってくる!」


二部くんが浴室へいった後 僕はドアの前に立って部屋をぐるーっと見渡したんだ


「!」


どうしても目に入るのはごみ箱の白い山


そうか…


「休んだ理由は僕のせいだったんだ…」





サイドボードの写真立てには


狭き門を潜り抜け合格通知を手にガッツポーズをした二部くん





嬉しそうに拍手を送っている僕の姿




サーーーー


聞こえてくるシャワー音に掻き消されるかのように


僕はその山に薄い雪を積もらせた






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