※声



「また週末会いに来るよ」
「はい」

最近、会う間隔が少しだけ長い
お互い生活があることは頭の隅ではわかっているが、2人の心と身体は一心同体
妖力の交わりは快感以上の欲求を満たし、なくてはならない存在へとなっていた



週末の早朝

「高山さんのところに行ってきます」

沢城は起床後すぐに家を飛び出し、寝ている虫達を起こさないよう静かに妖怪横丁へ向かった

「お邪魔します…高山さん?」

朝一番に会いたかった人物は、その場にはいなかった
住居人の代わりに自分が定位置へと座り、辺りを見回す


部屋は綺麗に片付いてる
テーブルには黒イモリの燻製
風邪?


ガタン…

「沢城…くん」
「高山さん、勝手に来ちゃいまっ…」

予想外の事が起こっている、そう思った高山はあまりの驚きに手に持っていた下駄を床に落としてしまった
覚束ない足取りのまま沢城の元へ進み、いつもより少しだけ強く抱きしめた

「高山さん?」
「もうちょっとこうしててもいい?」
「もちろん…////」


愛おしい存在に
しばらく会えないのなら
食らってでも我がものに


「はぁ……ねぇ…今から僕をめちゃくちゃに抱いて欲しい…」
「どうかしっんっ…///」

唇で言葉を紡ぐ

「何も聞かないで…今は沢城くんに溺れたいんだ…」
「…高山さん…話は後で聞きます…」

サラリとした生地の衣服は一瞬で肌蹴け床に散らばり、誘惑した者は、既に魅惑者に組み敷きられ荒い息をあげていた

「あっ…はっ…んぅ…」
「いつもより…敏感ですよ?」
「ちがっ…はぁんっ…んっ…早くっ…沢城くんが…欲しい…」
「////…」

何かに急かされているのか直球過ぎる欲求に、いつもなら丁寧に行う愛撫も最低限に


意識を保っているのが限界だ


誘いをやめないその孔に、主張した欲望を埋め込む

「っあああ!!!」
「はぁ…っ…熱い」
「いやぁあああ!!んあっ!!」
「高山さんっ…声がっ…」

誘惑者の理性を失った制御不能の甲高い声が魅惑者の頭に直接響いて理性を蝕んでいく
野獣と化した身体は本能的に動き続け、体液は止まることを忘れたかのように流れ出る

「ああっ!やっ!んあっ…ひぃっ!うっ!んぁっ!」
「駄目だっ…高山さんっ…僕もぅ…はぁっ!」
「んっ!んっ!はっ!さわっあぁああ!!」
「たかっやまっさあああ!」


今日このタイミングで沢城くんに会えると思ってなかった
身体も心も君で満たされて意識を手放せるなんて
僕は幸せだ…


朝の静寂な空間に似合わない息遣いが1人

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「…」
「高山さん…?」
「…」
「気を失ってる…」

眠っているかのように安らかな表情
脱力しきった身体は、しっかり支えないと腕の隙間から滑り落ちそう
身の支度を済ませ、寝床に横たえさせる


高山さんどうしたんだろ
疲れてたのかな
いつもより顔が青白いけど、すごい安心している顔
鼓動は…いつも通りだ
早く声が聞きたい


しばらくして、家の世帯主が帰ってきた

「おや?沢城くんかね?」
「高山さんのお父さん。おはようございます」
「いつも鬼太郎がお世話になっとるのう」
「いえ…こちらこそいつもありがとうございます」
「鬼太郎は…ふむ…意識を手放してしまったか」
「高山さん何かあったんですか?」
「沢城くん、鬼太郎はしばらく起きぬかもしれん」
「えっ」
「目が覚めたら連絡をするから、今日は帰った方がいい」

そう言われ沢城は二つ返事で帰っていった

「悪いのう、沢城くん。さてと、そろそろ連れて行くか。一反木綿頼む」



ゲゲゲの森

「ただいま…」
「おかえり鬼太郎。早かったな」
「ええ、高山さん体調が良くないみたいで」
「そうじゃったか」
「朝ごはんの支度をしますね」

いつものように家にある食材で、簡単に朝食をすませ

「ちょっと森に行ってきます」

気分転換に森へ出かけた


この森は昔から僕たち妖怪を自然に受け入れてくれたな…

高山さんも人見知りの僕をすぐ受け入れてくれて、とても嬉しかった
今思えば、あの捻挫は僕を庇ってできたものだし

知り合ってから自分がいかに欲深いか知った
高山さんを手放すなんて無理…不可能だ
そんな事したら僕が僕でなくなる

「おっと、奥に来すぎた。戻ろう」



ここ数日、窓から空を見上げながら思いふける事が続いた
首を長くして待っている知らせがなかなかこない

「はぁ………」
「大丈夫か、鬼太郎」
「父さん…僕なら大丈夫ですよ」
「たまには子供らしく感情を表に出してみるのはどうじゃ?」
「感情?…ん…でも僕はいつもこんな感じですよ」
「そうかのう…」
「………はぁ…」


少し気力をなくしていたそんなある日の夜

ゲコ…ゲコ…バシャ

真夜中に池の水が騒がしい
沢城は眠たい身体を起こし、様子を伺いに階段を降って池に向かった
近寄って水面を覗き込んでみると水草が何かを形作り何かを映し出しはじめた

「これは…」

『…ここまでか…』
『このままじゃ駄目じゃ。またあの時の二の舞になるぞ』
『…すみません、父さん』

「なんだ…」

『父さん…』
『もう少しだったのう』
『はい…そのもう少しが僕にはまだ…』
『命ばかり削っては身が持たんぞ』
『わかってますよ…』
『さて、休んで回復じゃ。ほれ、黒イモリ茶を持ってきたぞ』

「これは高山さんの記憶?」

『でかしたぞ鬼太郎!よくやった』
『…やりました…ね…』
『しかし妖力が尽きとる。しばらく肉体と魂の休息が必要じゃな』
『でも明日は会う約束を…』
『もうすぐ夜明けじゃ…先に家に戻って休んできなさい…その後なら会いに行くくらいはできるじゃろう』
『…よかったぁ…僕は彼に会えればそれだけでいいんです…』

「高山さん…」

水面の揺らぎは終わり、月夜を映し出していた

妖術の特訓をしてる様子だった
会いに行った日の直前まで特訓してたんだ
何か大きな戦いでもあるのか
僕も協力できるのか
…僕が今やれる事は…

翌日から沢城の姿は、森の開けた場所にあった
ここは昔から妖術の練習をする場所としてよく使っている
最近は妖怪退治の依頼も少なく、強敵との戦いもないため、この場所を訪れるのは久しぶりだった
自分の妖力で、幻術を作り出し、対戦を始めた

何かの力になれるなら
いつでも参戦できる様に

連日の特訓で、妖術の強さにさらに磨きがかかってきたそんな時

カーカーカーカー
ペラ…

烏が手紙を落としてきた
中身を確認すると全速力で家に戻り

カッカッカッカッ…

全速力で妖怪横丁を駆け巡った
ゲゲゲハウスの階段も段飛ばし
焦る気持ちを深呼吸で整えて
暖簾をあける

バサッ…

「…っ…んぐっ…」

視界がすぐ滲んで何も見えないまま腰が砕けその場に座り込んでしまった

「わぁああああああん…ああぁあー」

産声以来抑えの効かない泣き声は、悲しさ切なさ寂しさからの解放で

「ひっ…うぐっ…うああああああああん」
「そんなに泣かないで」
「そっんなのっ…ひぐっ…むりぃ…わあああああ」

待ちわびていた声は、抑え続けていた感情の暴走に火に油を注ぐようなものだった

「もう…どこにもっ…ひっ…どこにもいかないでっ…うぅ…いなくならないでぇ…ひぐっ…」
「僕はいつも君の側にいるよ」


大切な人に絶対嘘はつかない
嘘は言えない
だから
いなくならないとは言えなかった





僕の腕の中で最愛の人が眠っている
僕のせいで寂しい思いをさせてしまった
夜通し泣き、そのまま泣き疲れで眠ってしまった彼に早く詫びないと…

高山は沢城の頭をずっと撫でながら目覚めを待った

「ん…」
「おはよう」
「////…ぉはょぅ」
「目…まだ赤いね。声も枯れてる」
「ちょっと泣きすぎちゃいました」
「…ごめんね。心配かけて」
「ぃぃぇ…ぉかぇりなさぃ、高山さん」
「ただいま、沢城くん」

寂しさを埋め合わせる様に首の角度を何度も変え濃厚な口付けをかわす
甘い吐息が漏れ出した頃、いつもの朝が2人を静かに迎えてくれた

ジョギングから帰って来た目玉おやじと3人で朝ご飯を食べながら、昨日の話をする

「覚えてないんですか?」
「うん。気がついたら沢城くんが大泣きしてて、何が起こってたのかよく覚えてないんだ」
「それは鬼太郎の魂がこの世になかったからじゃよ」
「父さん?」
「この世にないってどういう意味ですか?」
「沢城くん、わしから説明させてほしい」

目玉おやじは、お茶を一杯飲んでからゆっくり話し出した

「池の幻影で見せた通り、訳あって鬼太郎は妖術の特訓をしておる。しかし、妖力を消費する妖術の扱いは難しいんじゃ。修得にも時間がかかり、ここ数ヶ月の間に連日酷使した鬼太郎身体は、肉体的にも精神的にも限界がきてしまってのう。リフレッシュさせるため、身体から魂を切り離しわしが預かってたんじゃ。もちろん何も考えずに済む様に記憶を止めたままでな。あの日、偶然にも沢城くんが来てくれたおかげかのう…喜びのまま意識を手放しそのままの記憶で意識を取り戻したから驚いた…ということじゃ、鬼太郎」
「確かに身体の疲れは全くないし、妖力も蓄えられてます」
「沢城くん、鬼太郎はまだまだ修行が必要じゃ。もし今後鬼太郎に何かあったら助けてやってほしい。頼む」
「もちろんです。高山さんは僕が守ります」
「心強いの」
「いいえ。それが僕の役割ですから」

目玉おやじの話は食後も続いた

「そうじゃ鬼太郎、沢城くんにアレを見せてやりなさい」
「はい」

高山は胸を曝け出し、秘めていた物を光らせた

「これは…!?」
「これはな、この世に地獄の力を呼び起こす事ができる地獄の鍵なんじゃ」
「どうしてそんな危険なものを」
「今は僕が地獄の閻魔大王から預かっている状態で、いつでも鍵は開けるけど、この世で地獄の力は勝手に使ってはいけないんだ」
「しかしじゃ、わしの予想では、地獄の鍵を使う日はそう遠くないと思っとる」
「…その日の為に特訓してるんですね。僕も一緒に特訓させてください!一緒に戦う!」
「沢城くん…」
「なんとも頼もしい子じゃ」


その後は少し埃っぽくなってしまったゲゲゲハウスの掃除をすることに
高山は拭き掃除をしながら少し思いふけっていた

どのくらいの期間、沢城くんと会えなかったのか
どこで自分の身体を休めてたのか
これからも同じ事は起こるのか…

「どうした鬼太郎?」
「あ、すみません。そっちも拭きますね」

考えてたら手が止まっちゃった
…父さんに聞いたら教えてくれると思うけど
聞いたところでどうにかなるわけでもないな
それよりも沢城くんだ
お互い反対側から拭き掃除をするはずだったのに、僕の後ろから離れない
さっきの力強い言葉を聞いて、気持ちの切り替えができたのかと勝手に思い込んでたけど
まだどこか寂しそうな顔をしている
僕は…どうしたらいい
逆の立場だったら…

掃除が終わる頃には日が沈み始めていた

「今日も泊まっていってよ」
「…うん。そうします」

簡単な夕飯を済ませ、今日は早めに寝床につくことにした
布団に横になりながら高山は語り出す

「今日はありがとう。僕は怖くて一緒に戦って欲しいなんて言えなかった。沢城くんが強い事は知ってる…だけど、万が一、沢城くんに何かあったらって考えるだけで生きてる心地がしなくなる…」
「高山さん、最初に会った日に言ったじゃないですか」
「え?」
「これからは1人で抱え込まないようにするって」
「…そうだったね」
「僕たちは一心同体だから…」
「…ん…あっ…」
「もう絶対離さない」

沢城は高山の身体を隙間なく密着させ両手の指を絡ませて抱き寄せる

本当に会いたかった
会って抱きしめたかった
抱きしめて声を聞きたかった
声を聞いてキスして
もちろんセックスだって…
たった数週間の事かもしれないが、何百年も会ってないくらい心は寂しかった

ぽっかりあいた心の穴を埋めるべくしばらく抱き合っていた2人だが、高山がそっと沢城のモノに触れながらこんなことを言い出した

「今日は…その…僕が舐めてもいい?」
「えっ…//////」
「今日は沢城くんにいつもより気持ちよくなって欲しいんだ」
「僕はいつも気持ちいい思いをしていますよ?」
「///…でも今日は…ね?お願い///」
「わかりました…無理はしないでください」
「//////…うん/////」

なるべく月明かりがが当たらない部屋の隅に沢城は腰をおろし両脚をM字に広げて高山を招いた
高山は四つん這いになって近づき、奉仕するモノに両手で触れるが今日に限って震えがとまらない

高山さん、きっと責任を感じて…
ちょっと無理をしてるのは見え見えだけど…その思いだけでも嬉しい
でも今にも透明な滴が流れ落ちそうなその瞳を見つめると胸が熱くなる

沢城はそっと高山の両手を包み込み

「こうやって手を動かしてみてください」
「…うん///」

困惑していた高山を誘導した
高山は言われた通りに動き出し

「沢城くんの…大きくて…硬くて…ビクビクしてる」

思った事を珍しく声に出していた

パク

「んあっ///」

不意打ちに口で咥えられ、いつも抑えている声が自然と出る

ピチャ…チュク…

「っん…」

けっして上手とは言えないが、覚束ない舌使いが絶妙で、予想のつかない高山の動きが、沢城を攻め立てる
しかし、本能の欲求は抑えられない
もう少し強い刺激が欲しい、と高山の頭に手を触れ少し強めに揺さぶってみると、察した高山は少し強めに咥え、舌もちょっと使いながらスピードを上げ始めた

「んぁっこれ…くっ…イキそっ…はぁっあっああ!!」
「わぁっ…/////」

ビュル…チュルル…トロ…

「たっ高山さん…ごめん…」

高山は沢城が達する瞬間、痙攣に近い動きに驚き口を離してしまったため、高山の顔に沢城の熱い想いがかかってしまった
これはこれでかなり卑猥

ペロ…ペチャ…

高山は舌で上手に舐めとり

「これは…ご馳走さまって言うのかな?」
「/////…凄く気持ちよかったです」
「/////よかった…」

体制を変え、今度はお互いのモノを舐め始めた

「あっ…」

沢城に上手に刺激され自然と官能的な声が出てしまう高山は奉仕中の口をつい離してしまう
そんな中小刻みに震え熱の解放を望むサインを感じた沢城は

「高山さんもイキましょう?」
「えっ////はぁっあっあっんあっあああああああ!!」

達するタイミングに合わせて口の動きに強弱をつけるあたりがさすがである

「これでおあいこですね」
「はぁ…////…はぁ…」

息が上がっているのは自分だけなのに、あいこと言われてちょっと複雑な高山だったが、そんな事もお構いなくそのまま対面座位で行為を続けた

「好きですよね…この体位」
「だって、沢城くんの顔が近くで見れるから////…あ、最後は…キスしながら…////…イキたい…」
「///わかりました」

小ぶりな臀部に両手を添え、最奥に想いが届くよう欲望を突き上げる
汗で束になった髪が身体の揺さぶりと同じリズムを刻み、そこに甘い吐息と荒い息遣いも加わる
体液が空気と混ざり合う独特な音色や、腹筋の上で奏でる軽い打音も少しずつ音量を上げてきた

「んぅんーんっんっっぅんーー」
「っん…んぅ」

抑え気味な声が発せられる頃、いつの間にか窓から月夜が差し込み部屋の壁に作り出してた大きな影は、揺れながら小さく消えていった

「はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ…ねぇ…沢城くん…」

高山は息を整えながら話出す

「まだ…寂しさ残ってる?」
「ううん…もう大丈夫です」
「僕は…沢城くんの側にいるから…」
「うん…っ…」
「だから…泣かないで」

沢城は高山の両手に自分の両手を重ね、ギュッと力強く握りながら

「…っ…もぅ…泣かせなぃで…ぅぐ…」

静かに一筋の涙を流した

「…ごめん…」

抱くことも出来ず、ただただ流れ落ちる滴を見守る事しかできなかった自分に無力感を感じていた高山であった



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