※ちび高と沢城兄さん



「なんだアレ?」

ゲゲゲの森でのデート中、見たことのない妖怪に2人は出会った
その妖怪は餅巾着のような姿をしていて、身体から赤い粉を撒きらし
何故かその妖怪が通ったところは、草木が縮み通り道ができていた

ノソノソとゆっくり歩いていた餅巾着妖怪が急にスピードをあげ、高山の近くに迫ってきた
そして…

「うわぁ!!ゲホゲホっ」

高山目掛けて赤い粉を撒き散らし始めた
細かい粒子を吸ってしまった高山はむせ続けている

「高山さんは下がってて下さい!霊毛ちゃんちゃんこ!!!」

沢城の強烈パンチが炸裂
妖怪の身体に風穴を開け、一瞬で空の彼方へ吹っ飛ばした

「手応えが全くなく呆気なかったな。それよりも!」

沢城は倒れ込んでいる高山に駆け寄り声をかけた

「大丈夫ですか?」
「身体が…痺れて…ゲホゲホッ」
「しっかりして下さい。この赤い粉は痺れ粉か」

あれ?なんか…高山さん縮んだ?
身を屈めているせいか
これじゃ抱き抱えた方が良さそうだな

「ちょっとこのまま妖怪温泉に行きます」
「ゲホゲホッ…うん」

温泉へ着くや否や、服を脱ぎ抱き抱えたまま湯に浸かった

身体や髪についた粉がなかなか落ちない
高山さん、まだ咳き込んでる
きっと身体の中にも撒き散らした粉が入ってるんだな
害がないといいんだけど
何故か左目蓋にも粉の色素がついて…ん…とれないな

「もういいよ…ありがとう」
「そうですね。長湯にもなりましたし。早く家に戻りましょう」

沢城の家について

「服も洗いますね。着替えがないので、よかったらタオル巻いててください」

服に着いた粉は洗濯板でゴシゴシ洗うと綺麗に落ちた

「ふぅ…これでいいかな。今日は早めに休みましょう」

先に寝床で横になっていた高山に優しいキスをすると、高山は沢城の胸に手を当てながら

「…今日は…ごめん」
「いいんですよ。調子が戻ったらにしましょう?」
「うん…おやすみ…」

身体を初めて繋いだ日から、一緒に寝るときは必ずお互いを求めて続けてきた2人だったが、今日だけは持ち越しせざるを得ない
ちょっとした罪悪感を抱きながら高山は沢城に抱え込まれるようにして眠りについた



翌朝

ん…高山さん…ぎゅう
今朝は頭の位置が随分下だな
サワサワ…?…これ頭だよね…え?肩ある?

パチリ

「えっええええ!!!!!」

聞いたことのない沢城の素っ頓狂な声が静寂な朝の森にこだました

やばいっ声が大きすぎた!
起きたら大変だ

「なっ!何が起こっている…」

沢城の隣で静かに寝息を立てて寝ていたのは、なんと赤子だった

この髪の色、この顔立ち、この妖気は紛れもなく高山さん!
なのに…明らかに赤ちゃん…可愛い///
そんな事よりこれから何をどうしたらいいんだ

モゾモゾ…

顔を布団に擦り付けてる
そろそろ起きそう

パチ

「おっおはようございま…」
「うわぁああああああああん!!」

目の前に現れた大きな顔に驚いたのか、赤子の高山は全力で泣き出した
そして泣きながら手を伸ばして何かを探している様子

「もしかして父さんを探しているの?」
「とぅしゃんっ!とぅしゃん!うわぁああん」
「今はいないんだ。ごめん。僕じゃ駄目かな?」
「やっ!」
「どうして?」
「やっや!」

パチパチ

「静電気?!!違う!これはっ!!」

バリバリバリバリ!!!

警戒心剥き出しの中、最大防御策である体内電気があの小さな身体から発せられた

「油断…してた…」

普段なら容易に対応できるはずなのに、完全に気を抜いていた沢城はピリッと感電しそのまま後ろにバタッと倒れてしまった
その光景に驚き、すぐさま近寄った高山は、沢城の顔を覗きながら肩を小さく揺さぶる

「どうして泣いてるの?」
「うぅ…やっ」
「僕が嫌いなの?」
「ううん」
「僕が倒れたのが怖かった?」
「…うん…」

可愛い…/////

「高山さんは赤ちゃんの頃から愛されキャラだ」
「?」
「あぁ、ごめん。今は鬼太郎って呼んだ方がいいのかな?」
「うん!」

両脇を抱えて抱っこする

軽い、軽すぎる
そして…可愛い//////
タオルの意味ないな…全裸だ
何か着せないと

「これでいいかな」
「???」

着れそうな服を見繕ったが…自分でいうのもなんだけど…ヒドイ

高山のちゃんちゃんこで簡易ベビー服を作って着せた…のはいいがノーオムツに気付いていない

「僕1人だと大変だ。父さんは森の見回りだし、妖怪横丁のみんなに助けてもらおう。鬼太郎、ちょっとお出かけしよう?」
「うん!」

自分のちゃんちゃんこでおんぶ紐を作り、小さな高山をおぶって横丁へ向かった



カランコロン…カランコロン

「おや?沢城鬼太郎、1人でどうしたんじゃ?」
「実は1人じゃなくて…」
「本当だ〜背中に赤ん坊がいるぞ」
「え?!」
「なんじゃと?!」
「あっ…//// お漏らししてる…」

背中にじわりと伝わる生温い液体
オムツ代わりの物をあてがっていなかった代償を早々に経験する事になった

「おやおや。こりゃ沢城鬼太郎も着替えせんとな。早く長屋にお入り。ほら!みんな見ておらんで協力せんか!」

とりあえず高山の面倒は長屋のみんなに任せて、沢城は砂掛けが持っていた高山の浴衣に着替えた
縁側に腰掛け眠っている高山を沢城にそっと抱っこさせると、沢城の周りからみんな顔を覗かせて赤子の寝顔を見守った

「こんなに小さいのに面影がちゃんとあるわね」
「しかし、わしらが知ってる昔の鬼太郎よりはるかに小さいのう」
「なんじゃこの左目蓋の赤いあざは」
「実は…かくかくしかじか」
「そうじゃったか。早く戻るといいのう」
「おばば!ミルクできたよ。きっと美味しいと思うよ!」

哺乳瓶の口を高山の口に近づけるとミルクを待っていたかのようにチュパチュパと吸い始めた

「よく飲むのう」
「きっとお腹空いてたのね」
「あ…」

確かに、僕はごはんの事何も考えてなかった
やっぱりここにきて正解だ

「そういえば高山さんのお父さんはいますか?」
「生憎じゃが、ここ最近忙しいみたいでの。しばらく戻ってこんのじゃよ」
「そうですか…どうしようかな」
「どうかしたのか?」
「泣きながらお父さんの名前を呼んでたんです。会いたいのかなぁと思って」
「きっと寂しかったんじゃよ。今はこうやってお主に身を預けて眠っている。きっと大丈夫じゃ」

ミルクを秒で飲み終わった高山はそのまま寝息を立ててまた眠ってしまっていた

「思い出すのう、砂かけ。鬼太郎の小さい頃は人見知りが激しかったし、その…いろいろ事件があって大変じゃったな」
「事件?」
「あっいや、なに、昔のことじゃ。アハハ」

子泣きじじいが言葉を濁してる
僕には言えない事なのかな
でも…気になる
後でおばばに聞いてみるか

「さてとじゃ。これからどうする?」
「それなんだけど、高山さんが元の姿に戻るまでみんなに協力して欲しいんだ」
「もちろんじゃよ。とりあえず空いとる部屋を使うといい」
「ありがとう。助かるよ」

本当に大変なのはこれからだった

妖術で幼くなった事もあってか、高山は日に日に成長していった
最初は初めて見る妖怪達には体内電気を食らわせていたが、それも1週間とかからずなくなり
そして、小走りができるようになるとそれはもう目が離せなくなった

「ちょっと待って!」
「きゃああー」

叫び声をあげながら横丁の中を裸足でかけていく

「捕まえた!」
「えへへ。つかまっちゃった」
「そんなに走ってどこ行くの?」
「どこにもいかない。はしるのたのしい!」
「ほれほれ鬼太郎。あまり沢城兄さんを困らせるでない」
「おばば!なんだその名前…」
「今はお主の方が年上じゃからのう。今だけ兄代わりとして鬼太郎の面倒を見たほうがいいじゃろ」
「さわしろ…兄さん?」
「うっうん?なんだ鬼太郎?」
「兄さんだっこ」
「/////」

沢城は小さな高山を軽々と肩車して少し高い目線から横丁の景色を見せてあげると、高山は沢城の髪の毛をグイグイ引っ張って大興奮して喜んでいた

しかし

「うわぁあぁあー」
「どっどうしたっ!」

満面の笑みをしていた高山が突然急に泣き出したため、急いで長屋へ戻った
何故か部屋の隅に身を丸め、警戒心を剥き出しにしている

「いやったべないでっ!こないでっ!!!」
「何を言っているんだ…」
「その当時の記憶が蘇っているのかのう」

光を失った目が狼狽し、ビリビリと電気を発している
そして髪の毛が伸びだし動き出した

「これは…もしや!まずいに事になった。沢城鬼太郎や、鬼太郎抱えて一緒に来てくれぬか」

一反木綿に砂掛けばばあと高山を抱えた沢城が一緒に乗り、横丁の外れの外れまで連れてきた
少し開けた野原に高山をそっと置き、2人は離れたところからその様子を見つめた

「やだぁ…こないでっ!くるな!!」

「暴走するぞ…」
「え?」

ドォーーーーン!!!!

突然重低音が響き渡った
隕石でもぶつかったかのように高山の周りの地面はめりこみ、木々は燃える事なく消滅し、森が一瞬んで無に変わった

「なんだっこの妖力の強さは…」

沢城はすぐさま高山の元へ向かった

「大丈夫か!」
「あ…兄さん…ぼく…」

大量の妖力を失った影響か、高山はそのまま倒れ込んでしまった
沢城は眠った高山を優しく抱き抱え、一反木綿の背中に乗り砂掛けばばあと一緒に帰路に着く事にした
その途中で砂掛けは高山の過去話を始めた

「昔、目玉の親父殿がいっとった。妖怪横丁に来る前は、住まいを構えず転々とその日暮らしをしとったそうじゃ。幼い鬼太郎の世話を近くに住んどった人間達に協力を求めたらしいが、化け物呼ばわりされ、石を投げられたり、火を放たれたり…。さらに悪い妖怪達には、鬼太郎の魅力的な妖力を狙われ、妖力を吸われたり身体を食べられたりしたらしい。近づく全ての物が怖かったんじゃろうな」
「…」
「いろいろと限界になった時、感情と妖力を抑えきれなくなった鬼太郎は小さな村を壊滅させてしまったそうじゃ。自分の存在に恐怖を感じ、この世で生きる事を拒んだ時期もある。きっと鬼太郎として生きる運命を背負いすぎたんじゃな。その後にこの妖怪横丁に鬼太郎はきたんじゃ」
「…鬼太郎という運命…」
「初めてこの妖怪横丁に来た時も人見知りが凄かったのう。だから鬼太郎の家は横丁から少し離れた場所に立てたんじゃよ」
「…そうだったんだ」

自分とはまた違う高山の生い立ちを聞き、無言で腕の中の人物を見つめ続けた



ある日

「髪の毛針!」

また少し成長した高山は、ドドドドッと音をたて木に毛針を命中させていた

「できた!やった!」
「おーい!そろそろお風呂行くよ」

そんな高山は沢城の姿を見つけるや否や駆け寄り

「ねぇ兄さん!さっきね、髪の毛針が木にあったたんだ!」
「凄いね!さすが鬼太郎」
「えへへ///嬉しい」

兄代わりの沢城はご機嫌な高山の手を引いて大風呂屋敷へと向かった

今の高山には少し深い湯船のため、沢城の膝の上に座って湯に浸かる

「鬼太郎?」
「ん?何兄さん?」
「生きてるの楽しい?」
「?変な事聞くね?楽しいに決まってるよ!」
「…そっか…よかった」
「兄さんは楽しくないの?」
「僕は楽しいより幸せかな?」
「幸せ?ん〜僕よくわかんない」

なんとも子供らしい思考に少し安堵する
お風呂帰りに高山はまた子供らしいこんな事を言い出した

「沢城兄さん大好き!僕大きくなったら沢城兄さんのお嫁さんになる!」
「なっ何を言ってるんだ////」
「いいでしょう?もう決まりね!」

そんな日が来たら本望だけど…

お湯で温まった身体がさらに火照り出した沢城だった



またある日

「僕も一緒に行く!」
「駄目だって!」

10歳児くらいの身長と5歳児くらいの身長の男児が長屋の裏庭で朝から喧嘩をしていた

「どうして!僕にもできる!」
「妖怪退治はとっても危険なんだ!そこらへんの虫達と遊んでいるような感じじゃない!」
「くっ!もういい!僕1人で行く!」
「何を言い出すんだ!君はまだ子供なのに!」
「沢城兄さんだって見た目は子供じゃないか!」
「何を!!」
「こらこら朝から何を言い争っておるんじゃ!おい鬼太郎!待つんじゃ!!」

その隙に高山は横丁を抜け出し

「待って!」

沢城はすかさず後を追った



「はぁ…はぁ…どこに行ったんだ……ん?微かに血の匂いがする」

そのまま足を進めると大きな赤鬼に出会った

「ここに子供の妖怪が来なかったか?」
「あぁ来たぜ。お前そっくりな生意気な小僧ならあそこだ」

河原に目を向けると高山がうつ伏せで倒れていた

「高山さん!!」
「あいつの知り合いか?まったく、何が妖怪退治をするだ。俺は昼飯を食ってただけなのに」
「すまない。僕が代わりに詫びるよ」

倒れていた高山を抱き寄せ仰向けにさせてから声をかけた

「大丈夫か?怪我は?見たところ擦り傷だけかな」
「…ごめんなさい…」
「どうしてこんな真似を」
「僕も…沢城兄さんと一緒に戦いたかったから…一緒にいたかったから…だから…」
「本当に君は…ひどい怪我じゃなくてよかった…」

ピン!!

妖怪アンテナが妖怪の気配を感じ取った

「妖気だ!嫌な感じがする…意外と近いな」
「え…沢城兄さん?」
「鬼太郎はここにいるんだ。いいね」
「うん…」

そうこうしている内に河原の向こう側に大百足が現れた

「動きが早いっ!わっ!」

動きの早い敵の無数の足に沢城は簡単に捕まってしまった

「動けっないっ」

ギリギリと身体を締め付けられ、苦痛の表情を浮かべているその姿を見た高山は

「やめろ!僕が相手だ!」
「っバカ!来るな!!」

威勢よく声をはった
すると高山の気配を感じとった大百足が攻撃の矛先を変え、攻撃をしてきた
高山はその攻撃を待っていたかのように指を構え

「指鉄砲!!!」

高山の攻撃で大百足の足が粉々に散り、捕らえられていた沢城が地面に落ちた事を確認してから

「体内電気!!!」

電気攻撃でとどめを刺した
沢城は幼い割にいつも通りの攻撃をした高山に疑問を浮かべながら近づくと

「バカはちょっとひどいんじゃない?…沢城くん」
「はっ!高山さん!戻ったんですか?」
「うん。今まで頭がぼんやりしてたけど、もう大丈夫だよ。でも…」
「身体はまだ戻ってないですね。左目蓋の色素は…だいぶ薄くなってきました。きっとあともう少しで元に戻ると思います。でも…よかったぁ…」

意識だけでも元に戻って安堵した沢城は、我慢できずに抱きしめて優しい口付けをした
でも高山はすぐさま沢城の胸を手で押しのけ

「っ/// この身体だとキスをしただけで心が張り裂けそうだ」
「元に戻ったら…この前の分も合わせてたくさん抱きますから」
「///// 今それを言わないでっ///胸が苦しい…」
「すみませんっ」

心と身体のバランスが難しいと感じた高山だった



横丁へ戻りながら2人は話を続けた

「小さい僕はどうだった?みんなに昔の事を聞いてもあまり教えてくれないんだ」
「とっても可愛かったですよ」
「そっ///そういうのじゃなくて…横丁に来る前、妖力を抑えきれなくなったことがあって、ある村を滅した事があるんだ…そういう事は起こらなかった?」
「覚えているんですね」
「…うん。今でも忘れられない」
「安心してください。誰も傷つけていませんよ」
「本当?よかった…他はどう?」
「あと…僕のお嫁さんになるって言ってました」
「そうなんだ…え?ええ??!なんだって///」
「だから、僕のお嫁さんにー」
「わーわーわー!!きっと何かの勘違いだって!」

そんなやりとりをしている間に身体も元に戻った

「高山さん…」
「ん?」
「この世で生きているのは楽しいですか?」
「ん〜楽しいと言うより、幸せ…かな」
「っ//// 僕と一緒です」
「沢城くんと一緒にいれて、こんな幸せな事ないよ…それに…今日は沢山抱いてくれるんでしょ?」
「もちろん…」

2人にいつもの日常が戻った瞬間だった





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