※特訓



いつもの起床時間は10時
今の時刻は7時13分
普段この時間に布団で寝息を立てているはずの高山は、竹筒に白湯を入れ
隣にいる沢城は、小ぶりなおにぎり3つと大きなおにぎりを6つ握り、竹製の弁当箱に詰めていた
空いた隙間に黒イモリの燻製も3つ詰め込む

「父さん、準備できました」
「うむ。ではいくかの?」

目玉おやじの案内で、いつも高山が特訓している場所へ3人はきた
横丁の雰囲気とは全然違う、どこか地獄を彷彿とさせるこの景色は、自然と身体が引き締まる

高山と沢城は距離をかなり離れてスタンバイし、集中力を高めた

「手始めは、単体攻撃じゃ!」

目玉おやじの掛け声で、妖術で作り出した敵が現れた
吸血樹のような古樹をリモコン下駄で一撃

「次は、団体攻撃じゃ!」

今度は倒したはずの古樹の切り株から無数の枝が現れこちらに向かってきた
さっきと同じ樹属性を髪の毛針で蹴散らしたあとも

「次はこいつじゃ!」
「これはどうじゃ!」

容赦なく次々と敵が現れた
中盤に差し掛かってくると少し戦略を考えないと倒せない強敵になり

「なっ!身体が透けて実体を保たないだと…!こんなのどうやって…うわっ!!強い…」

沢城は攻略法をなかなか見出せず、敵が生み出す風圧に負け地面に叩きつけられていた
この空間での敵からの攻撃は、殴られた感触はあるものの無傷で済む
しかしそれも攻撃を受ける側に妖力がある程度あればの話
最初こそ無傷だった沢城も、頬や膝に擦り傷ができ始めていた
離れた場所で同じ敵と戦っている先輩の姿を眺めると、息をあげることなく空中で敵の攻撃を軽々避け、そのままの体制で体内電気をくらわせ、髪の毛槍でトドメを刺していた

「高山さん…凄い…そうか、体内電気で!」

バリバリバリバリ!!



「そこまでじゃ!」

終了の合図を聞き、沢城は両手を大の字に広げそのまま大地に倒れた

「はぁ…はぁ…疲れたぁ…」
「沢城くん大丈夫?」

高山は倒れ込んだ沢城に駆け寄り優しく手を差し伸べて身体を起こさせた

「初めてなのにほとんど無傷で凄いよ!やっぱり沢城くんは強いなぁ」
「高山さんこそ…さっきの攻撃の仕方は勉強になるし凄い威力でした」
「僕は何回も同じ特訓してるから、ある程度攻略法を掴んでいるだけだよ」
「凄い…カッコ良かった…」
「//// そっそうかな…」
「さてと、遅めのお昼にするかのう」
「お腹空いたね、それじゃ」
「「いただきます」」

モグモグ…

「美味しい〜」

ただの握り飯なのに空腹の2人にとって最高のご馳走だった

「ちょっとした遠足じゃな」
「遠足にしては、景色が悪すぎですよ;;」
「そうでもないじゃろ?竹の湯も悪くないわい」
「「;;;」」

2人は少しだけ困惑した顔を見せ合いながら、残りのおにぎりをほうばった



家への帰り道

「凄い夕焼け…まるで街が燃えてるみたいですね」
「本当…火祭りみたいだ」
「火祭り?」
「毎年秋になると横丁の火祭りがあるんだ。みんなで願い事を祈りながら火を見る静かなお祭りなんだけど、それに似てて。今年は沢城くんも一緒に火祭りに行こうね」
「はい。是非一緒に行きたいです」
「手…繋いで帰ろう?」

沈む夕陽に作り出された長い影は、1ミリの隙間も生み出さずに林の中へと消えていった



いつもの就寝時間は19時
今の時刻は21時37分
普段この時間に布団で寝息を立てているはずの高山は、窓の桟に手をつき艶のある喘ぎ声を発していた

「あぁっ…んっ…さわぁ///…はっん…」
「高山さん…大好き…好きで…好きすぎて…たまらない…んっ…」
「僕だって…んぁっ…あぁっ///」
「離したくない…」

ボタンを全て外した上着だけ羽織り、後背位でゆっくりと優しい営みの最中
彼らに日中の疲れなんて少しも残っていなかった

「はぁ…はぁ…ん…さわ////…前から抱いて」

熱い秘部からジュルリと欲望を引き抜き、高山を後向きから前向きにさせ、ギュッと抱き寄せる
ここ最近の高山は、気持ちが昂り理性が欠け始めると沢城の事を愛称で呼んでくる
呼ばれている本人は名を呼ばれる度に背中をゾクゾクさせていた

「はぁ…とっても安心する…////」
「…このまま前から抱いていいですか?」
「もちろん…さわに抱かれ続けたい…んっあっ!はぁあああん!」
「もう僕の形…覚えちゃったんですね…すんなり入りましたよ…嬉しいです…」
「あっ…んっ…んぅ…さわぁ…」

今度は向かい合わせになり、高山は沢城の首に両手を巻き付け、沢城は高山の腰を持ち上げていわゆる駅弁スタイルで行為を続けた

「んっ!んっ!んぅっ!あっ!あっ!はぁっ!んあっ!」

さっきより少し早い動きに合わせて喘いでいた高山の両腕がだんだんと力なく垂れてきたところで、沢城は抱いていた身体をゆっくりと床に下ろしそのままの律動を繰り返した

「んあっ!もう…ああっ…だめぇ…さわぁだめぇ!あああ!!」
「くっ…イク…っ!!!」



余韻に浸りながら沢城がゆっくりと自身を抜くと締めが甘くなった孔から白い想いがトロっと溢れてきた

「あっ…さわが漏れちゃう…」

クプ…

「んぅ////」

自身が吐き出した想いを人差し指で孔に押し戻してあげると、高山は愛おしそうな声を上げながら飲み込んでいった
こんないやらしい身体になってしまったのは、自分の影響なのか、それとも元々の素質が開花したのかはもう沢城でもわからなかった

「沢城くん…大好き…むにゃ…」
「おやすみなさい…高山さん」

今夜はそのまま身体を休ませる事にした





今の時刻は夜明け前の4時56分

「…っ」

昨日の余韻で気持ちよく寝ていた高山だったが、嫌な胸のざわつきで目を覚ましてしまった
自分の胸に手を当てて深呼吸をひとつ

ドクン…ドクン…

自分の鼓動とは違う胸の中で何かが蠢いている
これはきっと…
ちょっと寂しいけど、察しのいい君に悟られないうちに家に戻ってもらおうかな

当たって欲しくない予想をしながら、隣で眠っている大切な人に優しくキスをおとし、いつもの起床時間まで二度寝することにした
…が、その二度寝は寝坊の原因になった

「起こしてくれてもいいのにぃ」
「気持ちよさそうに寝ていたから悪いと思って」

お昼はとっくに過ぎていた
身支度を整えながら今日の予定を伝える

「今日は家まで送るよ」
「…もうちょっと一緒にいたいです」
「わかった。夕方送るね」

午後は夕方まで横丁内を散策しのんびりと過ごした
今月の瓦版には、似ているランキングが発表されていて

「僕と沢城くんがNo.1だって!」
「2がお父さんと毛目玉…編集者に一言言いたい内容だ」

そのまま町内を歩いていると

「鬼太郎〜!沢くん!よかったら出来立て食べていってくれよ」
「ありがとう小豆洗い」
「いただきます。うん、すごく美味しい」
「そうだろう!今度は箱買いしてくれよな」
「そっそうだね〜父さんと相談しておくよっ;;;;」
「相変わらずお人好しさんですね」

隣の雑貨屋では

「やー沢くん!珍しい物を見ていかないかい?」
「珍しい物?」
「僕にも見せてくれよ、つるべ落としっ…て!!!なっ!!!!」
「昔菓子のおまけ用に準備した鬼太郎の生写真だ。ねずみ男からもらったんだけど今更出てきたんだよ」
「…高山さんの水着姿や裸ちゃんちゃんこ姿だと!欲しい…これはいくらだ」
「えっ!ちょっと沢城くん!」
「全部買う!いくらする」
「ん〜これは売り物じゃないからなぁ〜値段はつけられないから全部持ってってくれ」
「いいのか!お前いい奴だな」
「あの…それどうするの?」
「どうするって家で愛でるんですけど?」
「ハイ…愛でられます;;;」

夕方まで横丁ならではの楽しみ方を堪能した2人…いや1人だった
そのまま2人の行き先は、人間界に向かい

「いつかさ、沢城くんと一緒に旅をしたいなって思ってるんだ」
「えっ僕とですか?」
「うん。昔父さんがいろんな所を旅して知識を深めてきたって言ってた。僕もいろんな世界を見たいし、もっと知識を深めたいんだ。どうかな?」
「もちろん。一緒に行きたいです」

たわいもない会話をしながらだと、妖怪横丁からゲゲゲの森までの道のりはあっという間だった

「特訓にも付き合ってくれてありがとう。とっても心強かったよ。またお願いね。今度は沢城くんのお家にお邪魔するよ」
「はい。待ってます」
「今日はゆっくり休んで。じゃまたね」
「うん…また…」

大好きな人の背中を見送る時はいつも笑顔になれない、これからもなれる気がしない
沢城は、そう思いながら家の階段を一段ずつ登って行った

「ただいま父さん…いないか。夕飯までまだ時間があるし、もらった写真でも見ながらお茶でも飲もうかな」


その頃高山は足取り重くまだ横丁へ辿り着いていなかった

「っ…はぁ」

まただ
胸が熱い…
息がし辛くて苦しい…
父さんに会ったら言わないと
…足が動かない

「いったん…もめ…」

視界が暗転し、その場に倒れ込んでしまった



「鬼太郎?おい鬼太郎!」
「…ん、あれ?」
「目を覚ましたか鬼太郎」
「父さん?ここって」
「地獄じゃよ」

身を起こして周りの様子を見回した
確かに今自分が横たわっているのは、地獄だった

「地獄で何かが起こっているようじゃ。その影響で、地獄の鍵が共鳴しておる」
「何が起こっているんでしょうか?」
「わからんが…これから閻魔大王のところに行って聞いてみようと思う。鬼太郎、動けるか?」
「はい。僕も行きます」

ゆっくりと歩みを進めている途中、血の池地獄の側を通った時にこんな会話が耳に入った

「またあの池の力を借りた妖怪がきたんだって?」
「最近増えてますのぅ」
「子孫繁栄は妖怪の世界でも死活問題だからな。ま、我々に力を貸してくれるのが代償だ。悪くない」

血の池地獄の力ってどんな力なんだろう
子孫って子供の事だよね

トクン…

さっきとは違う胸の高鳴りを感じながら足を進めた



閻魔大王がいる空間はいつ来ても身震いがする
話を要約すると原因は分からないが、今地獄では見たことのない変な妖怪が突如生まれ暴れ出している事件が増えているとの事だった
僕も参戦できるようしばらくの間、地獄で地獄の鍵を使った特訓をしろとの通達を受けた

「一体何が起きているんでしょうか?」
「妖怪が突如生まれるというのはどういう事なんじゃろうな。しかしじゃ、今までの特訓は役立つじゃろう」
「はい、父さん」

次の日から僕と父さんは地獄での特訓を始めた





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