※おかえり【完】



「   」
「   」

誰か僕を呼んでる?

「鬼太郎!ねぇってば!」
「ん…あ、ねこ娘」
「あ、じゃないわよ!せっかく旅行から帰ってきたのに寝てるってなんなのよ!お土産減っちゃうんだからね」
「お土産…あぁ、みんな帰ってきたのか」
「何よ。帰ってこなくてもよかったわけ?」
「そこまで言わんでもいいじゃろうて;;」
「そうじゃよ、鬼太郎はゲゲゲの森の監視のために留守番してくれたのを忘れるな」
「そっそうだったわね。でも別に異常はなかったんでしょ?」
「まぁ、いろいろあったけど…うん大丈夫だ」
「そう。ならよかった」
「さてさて、土産話がいっぱいあるんじゃ。さっそく準備じゃ」

窓の外からも聴き慣れた声…の前に臭いがしてきた

「よう鬼太郎ちゃん」
「…今度は、お前か」
「友人に向かってなんだってんだ!相変わらず塩対応だな」

第二次妖怪大戦争が終わった後、みんなはアニエス達の誘いで西洋へ旅行に行っていた
これが落ち着かないようで落ち着くいつもの日常だ

「ったくよ〜どうせ俺様がいなくて寂しかったんだろう…んあ?こりゃまた下手くそだね〜」
「ん?右手首がどうかしたか?」
「どうかって、縫い目だよ!相変わらず不器用だなってっていってぇ!!何すんだ!」
「ありがとう!ねずみ男!」
「ちょっとどこ行くのよ!」
「すぐ戻る!」

沢城は勢いよく窓から外に飛び出し、そのまま人間界へ駆け抜けて行った

「思い出したのかのう…なぁみんな、わしにひとつ提案があるんじゃが」



カッカッカッカッ…
バサッ

「はぁ…はぁ…遅くなりました」
「わざわざ来てくれたんじゃな?すまんのう」
「いいえ。高山さんとの約束は絶対守りたい…」

一目散に駆け抜けて上がった息を整えながら通い慣れた家に上がり込んだ後、茶碗風呂用のお湯を沸かしながらたわいもない話をし始めた

「そうか。みんな無事に帰ってきたか」
「はい。話し方からするとずいぶんと楽しめたようで」

ふと目に入る2組の茶碗とお碗、それと箸
口元がちょっと緩む

「お湯が沸きました」

ここにも今までの日常が残っていた



横丁からの帰り際

「…今は我慢じゃ」

住人が集まって何かを話している場に遭遇した
長屋の裏に周り込み話に耳を傾ける

「もう少しで年に1度の火祭りなのにぃ〜酒がぁ」
「そのくらい我慢じゃ」
「来週おじさんがくる予定なんだ。鬼太郎がいないのなんて悲しすぎる」
「この時期を狙ってまたぬらりひょんが襲ってくるかもしれないわ」
「そしたら大変な事になるぞ。わしらだけで何とかなるかのう」

この世界にはぬらりひょんも西洋妖怪も生き残っているんだ
みんな高山さんが居なくなって困っている
…みんなも僕と同じ気持ちなんだ
でも…

沢城はかける言葉が見つからず、そのまま横丁を後にした



ゲゲゲの森に帰ってきたら

「これは…どういうことだ」

家の暖簾に立ち入り禁止の貼り紙が

「一体誰がこんなまねを」

沢城はその紙をクシャクシャに破り捨て家の中に入った

「父さん?」
「おぉ帰ってきたか」
「あの貼り紙は誰の悪ふざけですか?」
「まぁ、そこに座りなさい」

いつもの場所に腰を下ろす

「みんなと相談してのう。今度はわしらがゲゲゲの森の監視役を務めるから、その代わりに鬼太郎に自由に行動してもらおうかと思ってな」
「何を言っているんですか?父さんは?父さんは僕と一緒ですよね?」
「鬼太郎、今妖怪横丁は高山くんがいなくて困っとるじゃろ?」
「…それは」
「なーに、わしらは大丈夫じゃ。何かあったら声はかける。鬼太郎良く考えるんじゃ、会いたくなったらいつでも帰ってこれるこの距離じゃぞ」
「距離はそうかもしれませんが、でも」
「遠慮せずたまには自分がやりたい事をしたっていいんじゃないのかのう?」
「…少し考えさせてください」

僕のやりたい事…
高山さんがいない世界でやりたい事なんて…
父さんのお世話は?
妖怪退治は?

しばらくちゃぶ台に突っ伏して考えていたが答えは出なかった

「僕はどうすれば…」
「鬼太郎?」
「父さん…僕…とても…苦しい」
「誰かを想うと言うことはとても苦しいことなんじゃ。わしも昔はよく苦しんだものじゃよ」
「父さんも?」

いつも話が長くて途中で聞く事をやめてしまう父さんの話
でも今日は違った
父さんの家族の事
誰かを想う事
大人と言う苦しみの階段を登り始めるという事の意味

目を閉じれば浮かぶ、最初にあった日のあの表情
初めてキスをしたあの胸の高鳴り
初めて身体を繋げた時のあの熱さ
僕のお嫁さんになるって断言したあの無邪気な笑顔
そして右足引き摺って歩くあの後ろ姿
どれも忘れられない僕の想い出
この続きが描けるのなら…

「僕…決めました」
「うむ。お前を婿に出すようなもんじゃ。しっかりわしからも挨拶せんとな」

僕は高山さんの世界で生きていく事を決めた




妖怪横丁にて

「きっ鬼太郎!」

背後から名を呼ばれてふと振り返る

「…じゃなかった。沢城さん…」
「…これからは鬼太郎でいい。住む世界は違えど、僕も高山さんと同じ鬼太郎だから。そうだろう?ネコ娘」
「そっそうね。そうよね。みんなにもそう言っとくね」

そう告げたネコ娘は足早に沢城の元を去っていった


次の日からは

「なぁなぁ鬼太郎。おいらの魚拓コレクション見てくれよ」
「あぁ、いいよ」
「わーい!ほいじゃ、今から部屋に来てくれよ〜」

「おーい鬼太郎!寺を建て替えたいんじゃが、壁を壊すのを手伝ってくれ!」
「今行くよ」

ガンガンガン   トントントン

「今日は助かった!ほれ少しだがお礼だ」
「そんな、お金なんで受け取れない」
「たいした額じゃない。親父さんとたまにはうまいもんでも食え」
「…すまない。ありがとう」

横丁の生活は、ちょっと疲れるけど悪くない
そう思いながら沢城は、この世界の鬼太郎として少しずつ馴染んでいった



「さてと、今日はこの話をみるかのう」
「穴蔵入道の話ですね。僕は会ったことがないです」
「こいつは大変じゃった。奴のせいで鬼太郎の毛針が抜け毛になったんじゃよ」
「へぇ。どんな妖術を使ったんでしょうか」

ある日、2人は第5期のDVD鑑賞をしていた
もちろんプレイヤーは夜行さんからの借り物
もう少しで見終わろうとしていた時

「親父さーん」
「この声は、やっと来たか」
「?」

家の暖簾がめくり上がり、3人の視線が交わった

「鬼太郎!?なんか雰囲気変わったか?」
「この子はのう…」

目玉親父が蒼坊主にこれまでの経緯を簡単に説明した

「…そうか。鬼太郎のやつ、相変わらずだぜ全く」

そのやりとりを無言で見ていた沢城に

「沢城くんや、この蒼はな、鬼太郎の兄がわりで小さい頃からいろいろとお世話をしてくれたんじゃ」
「……兄代わり?」
「これからはよろしく頼むよ」
「…よろしく」
「おっおぅ;;」

蒼坊主の求めた握手は空気だけ掴み
沢城からはライバルと即認識されたようだった



その日の夜

「高山さん…」

夜風にあたる時、自然と右手首を触るようになった
そこには黄色味が強めの高山の髪が縫い込まれていて
もうとっくに手首はくっついてはいたが、どうしても抜く気になれずそのまま皮膚と同化していた

高山さんの髪は僕より少し硬くて
とてもいい匂いがして
触っているだけで心が安らぐ

…会いたい
いつか
いつの日か笑顔で会える事を僕はずっと待ってる
この妖怪横丁で

「さてと、そろそろ行くかの」
「はい」

今日は、火祭り当日
沢城たちが合流すると既にみんなが火の周りを囲んで、静かに盛り上がっていた
自分たちの願い事を短冊に書き、火の中で焚き上げようと右手を伸ばしたら

「…髪が光ってる」
「きっと側にいるんじゃよ。一緒に行くといっとったからのう」
「…はい。そうだ、高山さんの分の願い事も書かないと」

溢れ出そうな想いを一回の瞬きで抑えながら、もう一枚短冊に願いを込めて書き込み、そして火の中に

「さぁ、みんな祈るのじゃ」

油すましの声に合わせて、天高く登る火の粉を眺め続けた










初めて参加した日から今日で100回目の火祭り

「意外にあっという間だったな」

数十年前にこの世界のぬらりひょんが攻めて来て、物凄い変な顔をしながら僕と戦って
たまたま近くに来ていた烏天狗たちの力を借りて、やつを地獄送りにした
必ず復讐するって叫んでいたけど、何度でも来てみろ
僕が倒してやる!
人間界には何度も行ったけど、僕の住んでいた森には一度も帰っていない
その理由はなんとなく
だって、父さんもあの家にもういないし
あと僕の知っている人間はもう誰もいない
相変わらず人間は儚い人生だなって改めて感じた
もう深く関わる事はないだろうな

「鬼太郎〜迎えにきたぞ」
「あぁ、今行くよ」

今年もカワウソが迎えに来てくれた
町中に移動して今年も同じ願い事を2枚書いて目を瞑って祈った

いつか笑顔で会えますように…



よもふけ家へ向かう林道を歩いていた
その時だった

「さわ!」
「!!」

この呼び方をするのは1人しかいない
後ろを振り向いたら、ずっとずっと心待ちにしていた事が目の前で起こっていた
身体が…動かない

「高山さん…」

そのままゆっくりと近づくと、月夜に照らされた顔がよりはっきり見えてきた

「僕の知らない間にこんなに成長して…」
「それはさわも一緒でしょ?」


「ただいま」


家の外壁に寄りかかりながら、満天の夜空を見上げて2人は話し出した

「今日火祭りだったんだ…結局一度も一緒に行けなかったね」
「今まで十分堪能してきたよ」
「そう?」
「来年は一緒に行けるだろう?」
「そうだね。これからは何をするにも一緒にできるから」

夜風が気持ちいい

「…今まで地獄に?」
「うん。僕の願いを叶えて貰うためにね…でも、その代償が大きくて…戻ってくるのがこんなにも遅くなってしまったんだ」
「その願いって?」

高山は一瞬の輝きを放って消えた流星を見つめてから、顔を沢城に向けてこう言った

「僕…一時的に身籠れる身体にしてもらったんだ」
「えっ」
「だって、僕はさわのお嫁さんになるんだろう?僕はさわとの家族を望みたいんだ。さわは?」
「僕は…」

高山さんの言葉が嬉しすぎて気持ちが追いつかない
ふぅっ…と一息ついてから自分の想いを伝えた

「僕も高山さんとの家庭を望みたい」
「本当?よかったぁ」

僕がずっと待っていたその笑顔
目に焼き付けてからそっと抱きしめた



成長した2人には少し狭さを感じるこの住み慣れた部屋は、並んで座っているだけで密着度が増し
さらに座高の高さがちょうどよく、見つめ合ったその流れで口付けをして
絡めるところを全て絡めると甘い吐息が漏れ出していた
身に付けていた衣類を全て剥ぎ、互いの身体を隅々まで堪能し始めた

「さわの////…凄く大きい…ここも大人になるんだね…でも僕に入るのかな/////」
「初めてなんだから優しくするよ。でもきっと高山さんのここは…」 クプッ…
「はぁっ!んっ!」
「僕だけを受け入れるためにあるんだから、きっと大丈夫…」

唾液を絡めた指で優しく撫でながら、舌でも堪能し始めた

「不思議な形をしているね」
「そっそんなに舐めないで////」
「どんな感じなの?」
「とっ…とっても気持ちいい…/////」

止め処なく溢れ出てくる蜜を自分の欲望に絡め、ヌチヌチといやらしい音を奏でながら前後に擦り付けてみた
組み敷かれている高山の腰が快楽に耐えられず淫らに動いている
その様子を十分堪能した後に自身を納める場所を指で広げゆっくりと埋め込み始めた

コツン

何かにあたる…
もしかしてここまでしか入らないのか?

「さわ…もっと奥まできて」
「でも何かにあたるんだ」
「もう…我慢できない」

高山の両手に腰を押されグッと奥まで進ませると、今度は最奥にコツンとあたった

「っはぁ!」
「全部…入ったよ」

高山の表情は快楽と苦痛の両方を表し、両足はフルフルと震えていた

まだ動いてもいないのに…この吸い付きが堪らない

ゆっくりと動き始めるとビチャビチャという音も聞こえてきた

「あっ!!あん!!」
「なんか…声が色っぽい…」
「えっ…んっ!」

以前の身体よりも正常位の密着度が高くて、つい動きが早まってしまう

「あっ!あっ!やっ!んっ!んぅ!」
「高山さん…これは…もう抜け出せない」
「あっ!待って…んっんぅ///」

キュッと強く締め付けられたと思ったら、またキュウキュウと僕を緩く締め付けてきた

「もしかして…イッたの?」
「/// うん…」
「いいよ…一緒にたくさんイこう?」
「ああ!」

高山は慣れない強すぎる快楽に耐え切れず何度も何度も達してしまって
余裕のなくなった沢城も何度も何度も蜜壺に今までの想いを注ぎ込んだ

ずっと繋がっていた場所から、ヌルリと欲望を引き抜くとコポコポと流れ出る白い想いに混じる赤い想い

「ごめん…」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「痛かった?」
「ちょっと最初は…でももう忘れちゃった…」

水に濡らした布で身体を綺麗にして、何も羽織らずそのまま布団に潜り込んだ

「さわ?」
「ん?」
「もう僕たち一緒になっていいのかな?」
「誰の許可が必要なんだ?」
「え?だって父さんに言ってない」
「僕の父さんと高山さんのお父さんはもう挨拶を済ませている」
「え?!」
「僕は婿に来たらしい」
「え?僕がさわのお嫁さんじゃないの?」
「もちろんお嫁さんだよ」
「???」
「そんな困惑した顔しないで」
「だってよくわからない;;;」
「いいんだよ、そんな形式ばった事は。僕たちはもう家族なんだから」
「家族か…嬉しい」
「もう高山さんは僕の側から離れられない。だから…これからはもう名前を呼ばない事にする」
「そうなの?」
「うん。だって呼ぶ必要ないだろ?ずっと僕の隣にいるんだから」

そう言われて、自分よりも厚い胸板に抱き寄せられた

「寂しかった?」
「うん。寂しかったよ…目を閉じているとさわの顔が浮かぶんだ。でも目を開けると現実しか目に映らないから…」
「もうそんな想いはさせないよ。もしこれから先に同じような事が起こったとしても、君の目に映っているのは僕だけだから」

今夜は満天の星空
光り輝く星たちが2人の行く末を見守っている

「…もう1回キスしようか」
「1回でいいの?」
「ううん。違ったね、永遠に…だ」

互いの想いは実を結び、永遠の愛を誓い合った





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