いつもが特別に思える日


冬に近づきはじめた公園には、数えるくらいの人しかいなかった
僕たちはブランコの前に設置されてある2人掛けのベンチに腰かけて、他愛もない話で盛り上がり
「鬼太郎たら、いつもそうなんだから〜」
「そうかな〜」
いつも通りの会話なのに自然に笑みがこぼれ、心がすっと落ち着いてくる
僕は今まで何か勘違いしていたのかな
ネコ娘とこんな風に一緒にいれたら・・・でも、この先200年という長い試練が待っている
「あ、星がでてきた!綺麗ね・・・」
「・・・あ・・・あのさ、ネコ娘」
「ん?どうしたの鬼太郎?」
「その…ちょっと聞きたいことがあって…」
「私に?どんなこと?」
「えっと…」
さっきまでの自然な流れで切り出したかったのに
あ、ネコ娘の大きな瞳に小さな僕が映ってる
そんなことが気になっている僕は意外と冷静なのかも
「例えばの話でさ、ネコ娘にとって大事な人がいて、その人としばらく会えなくなるとしたら、どんな別れ方がいい?」
「ん〜なんかすごく現実っぽい例え話ね…;;」
「…;;」
「ちなみに鬼太郎だったらどうするの?」
「えっ!僕!?」
君の話を参考にしようとしてきたから、自分の答えは用意すらしてこなかった
「冗談よ。ん〜そうね…というか別れ方じゃなくて掛ける言葉とかじゃない?」
「そっそうだね…;;」
前言撤回だ、僕は凄く動揺していた…;;

ネコ娘の答えは僕と同じ考えだった
正直に会えなくなる理由を伝えるってこと
やっぱりそうなんだ、よし!
「ネコ娘、実は―」
「でも大事な人が恋人の場合、話は別かな」
「えっ!?そうなの?」
ふ―っ!!言わなくてよかった;;
「だって、好きな人としばらく会えなくなるのよ?どれくらいか会えないのかは分からないけど、その事実を知ってしまったらすごく寂しいし、何かに没頭していないと廃人になっちゃうかもね。わたしだったらきっとそう」
その言葉を聞いて、僕は、なんとなくだけど自分の気持ちに気付いた気がした
「あ、ごめん、鬼太郎何か言うところだったよね?」
「あっえっ・・・あ、明日も会える??」
「え?明日?ごめん、明日は予定があって…」
「じゃ、明後日は?」
「どうしたの?そんなに焦って…分かったわ。明後日に今日と同じ時間にまた会いましょう!」
「ありがとう!その…ネコ娘が来るの…待ってるから」
ネコ娘の姿が見えなくなるまで、僕はその場から動くことができなかった
明後日はしっかり伝えよう、そう心に誓ってから僕も家にむかった


*


夕飯の支度を済ませてから、父さんへこうお願いをした
「父さん、地獄への出発まであと2日待ってくれませんか?」
「鬼太郎、そう焦らんでもよいぞ。お前の準備ができたら出発するからのぅ」
「わかりました。では、いただきます」
この家でのご飯もあと2日か
そう思うといつもと同じ食事が、なんとなく美味しく思えてきた
明日もいつもの日常を満喫したい、と思います


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