自問自答の答え


色づいた木の葉が木枯らしに舞う、少し肌寒い季節が横町にもやってきました
寒さが苦手な妖怪たちは南に渡る準備などで忙しなく動いています

ハァ---

あ、僕の吐く息も白くなってる
綺麗な粉雪が舞い始めるのも、もう少しのようですね


そんな季節の変わり目ですが、僕と父さんは相変わらずゲゲゲハウスでゆったりとした毎日を過ごしています
この時期の隙間風はちょっとゾクゾクしますが、つるべ火の心地よい暖かさの方が勝って、ついつい昼寝をしてしまい…;;
家を訪ねてきた妖怪に起こされる日がほとんどです


今日もいつも通り、父さんの茶碗風呂に熱々の白湯を注いで、他愛もない会話を楽しんでいました
「ここ最近、妖怪退治の手紙や連絡がこなくなりましたね。このまま平和な日が毎日続いたら、僕たち妖怪ものんびりと暮らせます」
「ふむ。そのことなんじゃがな、鬼太郎」
「どうかしましたか?父さん?」
父さんは少し真面目な顔つきをして、腕組をしながら僕にこんな話をし始めました
「地獄の閻魔大王からこんな話があったんじゃ。人間界で悪さをしていた妖怪たちが何故が地獄の入口に集まり、地獄の亡者たちを相手に暴れておるそうじゃ」
「地獄でですか?一体何故…」
「黒幕は分からんようじゃ。日に日に集まってくる妖怪の数が増え、門番だけでは手に負えなくなってきたらしい。閻魔大王を除いた十王たちも妖怪退治に加わったがその代償として亡者たちの審判が滞ってしまっての、行き場が定まらない亡者たちが増えてきて困っておるらしい。そこで暫くの間、十王たちに鬼太郎の力を貸してほしいそうじゃ。地獄の秩序を守るためにとな」
「力を貸すというのは、地獄の鍵の力を借りたいということでしょうか?」
「そうかもしれんの。鍵の力を操れるのは鬼太郎しかおらんからな」
「そうですね。妖怪退治の手紙が僕の所に来なくなったのはきっとこのせいだったのか。性懲りもないっ。亡者たちが人間界やこの横町に溢れかえったら大変です!早く地獄へ行った方がよさそうですね」
「ん、そうじゃの。事の大きさから考えると…地獄へ行ってこの横丁に戻ってこれるのは、早くても200年後かの」
「にっ200年後!?そんなにもですか?」
「なに、わしら妖怪にとってはあっという間じゃよ」
「そう…ですね」
「もちろん今すぐ行くと決まったわけではないぞ。鬼太郎、お前の準備ができたら出発するかの」
「はい、父さん」
久しぶりの妖怪退治がまさか地獄なんて…;;
事の大きさに少し驚いたけど、皆の平和を守るために僕ができること…なんですよね

スゥ---ハァ---

少し深呼吸をしながら焦った気持ちを整えてっと
どうやらいつも通りの日常と冬の到来に少し別れを告げることになりそうです


父さんが用事を済ませるため部屋を出ていったあと、僕は床に寝ころんで天井を眺めながらふと考えた
「200年の間、横町の皆に会えなくなるのか…」
父さんの言ったとおり200年なんてあっという間なのかもしれない
…200年前のことなんてもう覚えてないけど…;;
皆には事情を話して、行ってきます、でいいかな
ねずみ男、あいつはきっと出発する日にも来ないだろうから声はかけなくてもいいかな
それに言ったところで僕にかける言葉はだいたい予想つくし
あとは…
あ…
「…ネコ娘に…なんて言おう…」
皆と一緒で正直に言ったら納得してくれるだろうか
それとも前みたく一緒について行くとか…でも、絶対に連れて行かないけど
「・・・」
僕はいつから連れて行かないって言うようになったんだろう
ネコ娘は一緒に戦ってくれる仲間…なのに
僕の余裕がなかったから?
存在を失うのが怖いから?
「・・・」
そういえば最近会ってないな
どうしているんだろう?

ハァ---

つるべ火の火が強いのか顔が火照ってきた
なんかこう…胸もギューッと絞めつけられる感じもするし、これって…
「…風邪かな…」
こんな大事な時期に…;;
父さんにうつすわけにはいかないので、ちょっと横になろうと思います


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