【新鮮な秋】ウエンツ鬼太郎+猫娘



日が暮れるのも早くなり灯りが手放せなくなった季節
まだ夕飯前だというのにゲゲゲハウスの窓からは暖かい灯りが漏れていた
その室内からは親子の楽しそうな会話が聞こえてくる
「おや?鬼太郎、一体何を眺めておるんじゃ?」
「人間界でやってる果物狩りや温泉巡りのちらしです。猫娘がもってきたんですよ」
「ほぉどれどれ…お!この秋の味覚ツアーがよさそうじゃな」
「僕も同じツアーを見てたところです。きのこに焼き芋!あけびやなしもあるみたいですし」
「どれも美味しそうじゃの〜」
「じゃ、これに決まりですね。明日、猫娘に連絡しておきます」
「ん!?そっそうじゃの。頼んだぞ鬼太郎」
猫娘の誘いに珍しく興味を持った鬼太郎に少し驚いた目玉おやじであったが、きっと秋の味覚に興味をもったのでは?と心の中で補正した


*


そして、ツアー当日
早朝から猫娘が鬼太郎の家に来てツアーの準備を手伝ってくれている
「はい!鬼太郎、これはいて!」
「ズボン!!?なんでツアーごときに着替える必要があるんだよ」
「あのね!その格好で一日中山にいたらどうなると思ってる?」
「ん〜あ、そうか!熊に襲われるかもしれないからってことか。それで怪我をしないような生地のズボンに着替えろってことだろ?」
「私は蚊のことしか考えてなかったわ…」
「蚊にはここにいても刺されまくってるからね…;;」
こんな会話をしながら人間らしい格好に着替え始めようとした2人だったが、この部屋にはプライベートという空間なんて存在しない
それを察したのか鬼太郎は
「俺が最初に着替えて外で待ってるよ」
「!?……わ、わかったわ」
と、猫娘が返答に時間がかかるくらい似合わない言葉を口にした



案の定、数分で着替えが終了し猫娘だけを残して家の外に出た鬼太郎
いつもと違う息子を見ようと地面に降り立った目玉おやじは全身を眺め始めた
「おぉよく似合ってるぞ鬼太郎」
「そうですか?ん…すねに衣服が触れるってあまり経験がないから変な感じがするなぁ」
「今のうちに色々チャレンジしておくのもいい経験じゃぞ」
「そうですね」

「お待たせ!!」
「ん!!!?」
「!!?」
人間界の流行スタイルで登場した猫娘に、かける言葉を無くす幽霊族親子
このままでは機嫌を損ねるのでは?と察した息子は言葉を続ける
「結構似合ってるじゃん」
「そっそう…?ありがと…鬼太郎も似合ってるよ」
「でもやっぱりすねに違和感が…」
「蚊対策と思えば大丈夫よ」
「そうか…そうだね」
「さぁ、行きましょう!」
3人はツアーの会話をしながら人間界へと向った
途中、何か気になるのかチラチラと何度も猫娘に目を向ける鬼太郎
猫娘もその視線に変に意識し始め、次第に会話が減っていった
数分間、無言の状態が続いた後、鬼太郎が猫娘のダメージ加工デニムを指差しこんなことを言い出した
「あのさ…ずっと気になってたんだけど…そのズボン破れてない?」
「え?あぁ〜こうゆうファッションなの!」
「ふぁっしょん…じゃ、あんなに心配してた蚊は?」
「これくらいなら大丈夫!ちゃんと虫除けスプレー持ってきたんだから」
「それだったら俺いつもの服でも―…」
「あんなに肌出してたらいくら虫除けしても刺されるでしょ?」
「ん、そうだね」
「もう鬼太郎ったら(苦笑)」
お互い変な緊張が解け、次第に笑顔も戻り始めた


地面がアスファルトに変わり人間界に来ると、カランコロン…と聴きなれた音が朝の住宅街に響きだした
「ちょっと鬼太郎!!下駄で来たの!!」
「え?俺、いつも下駄だけど?」
「そうだけど…なんの為にズボンにしたのよ」
「大丈夫だって!ほら、虫除けがあるじゃん!俺にも使わせてくれるんだろ?」
「!…い、いいけど…」
「父さんも虫除けした方がいいですよ」
「そうじゃの。全身刺されたら大変なことになるからの」
「アハハ気をつけてね!お父さん」
いつもと違うようでいつもと変わらない
そんな鬼太郎の言動に戸惑いと新鮮さを感じていた猫娘は、気持ち満腹の状態で味覚ツアーに臨んだのであった



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