【春に先駆けて咲く花】高山+風祭華



偶然拾った一枚の花弁を光にかざして僕は呟いた
そうか…
もう咲き誇れる季節(とき)が来たんだね―…と


「鬼太郎さん、こっちです」
「あっ待って!華ちゃん」
雪が舞い始めたのを合図に僕たちは再開した
彼女の振りまく笑顔は今でも魅力的で、今でも直視できなくて今日もまた視線をずらしてしまった
出会ったあの時から何も変わっていないな、僕…

僕は彼女に誘われて海の近くの公園に来た
近くにはイルミネーションの綺麗な大きな観覧車も見える
夜だというのにここには沢山の人間たちがいるけど、みんな夜行性になったのだろうか…
「せっかくなので、あれに乗りませんか?」
「あれ?あれって?」
彼女が指差した“あれ”とは、あの大観覧車だった
僕は返事をするのを忘れて右回りに動き続ける箱をずっと眺めていた
そしたら急に光の残像が目に映りこんできて、何かと思ったら華ちゃんのデジカメのフラッシュだった
「ビックリしたよ、華ちゃん」
「あははv驚きました?さぁ、行きましょう」
「うっうん…//…」
僕は華ちゃんに手を引かれて観覧車に乗り込んだ
お互い向かい合わせになって椅子に腰掛けたのはいいんだけど…
あぁ…なんで手元足元を隠すテーブルが無いんだろう…
僕は変な汗が出てきて焦りだした…;;

彼女は窓からみえる夜景に感動して素直な感想を僕に伝えてくる
僕も同じ景色を見ようとして、室内が揺れない様にそー…と窓に近寄った
ええーと…変な意味はないのですが、僕たちは今、対角線上になって違う景色を見ている
一応重力とか考えての行動…というかバランスは大事というか…
でも…
でも本当、夜を彩る光が幻想的で
こういうのみて感動する心の綺麗な人間はまだいることに気づいた
華ちゃんも…その人間で本当によかった

思えば、華ちゃんとの出逢いは偶然ではなく必然だったのかもしれない
ずっと…僕との出遭いを待っていてくれて
そして僕は、華ちゃんの願いを叶えることができた
会ってからあの話題に一度も触れてないけど…
忘れた訳じゃなくて、もう乗り越えたってことかもしれない
そう思った僕は、そっ…と元の位置まで戻って華ちゃんの綺麗な横顔を見つめた
そしたらつい―…
「綺麗だ…」
「え?」
「あっいや…夜景が綺麗だなぁって…//」
「はいv本当に綺麗ですよね」
言葉にでてしまってなんとかうまく誤魔化した…
…でも…これじゃダメだ…!
僕は何も乗り越えていないかもしれない…!

そう思って、透明なガラスに映り出された“彼女”に僕はそっとキスをした

「?どうしたんですか?」
「あっいや…そっ外綺麗だね…///」
「はいv」
「…/////」
結局、また同じことを言って視線をずらしてしまい…
あぁ…、僕はいつ堕天使になったのでしょうか…

1周して地上に戻った僕たちは、感謝の言葉と旅立ちの言葉を交わして家路に向った
もう…逢えないかもしれない
そう思って振り向くと、僕の瞳に映ったのは暗闇を照らすあの観覧車だけだった
僕はふっ…と軽い溜息をついて、僕の居場所である妖怪横丁へと姿を消した


今宵、闇を鮮やかに彩る可憐な華
誰かのために咲き続けるというのなら僕は心から願おう
永遠に―…と

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