※臥待月



朝日と共に増え始めた騒音が1日の始まりを告げる
あの後、高山は一睡もすることなくコンビニを梯子しては本を立ち読む行為を繰り返していた
電話での待ち合わせ場所は駅からだいぶ離れた高台
バスでの交通手段を聞いていたのだが節約も兼ね自分の足で歩くことに
地図の立ち読みのし過ぎで目的の場所は頭にインプットされていた


駅から道なりに進んでいくと左手前方に大きな焦げ茶色の建物が姿を現した
大学か大病院と思われるその建物の右道路へ入ると交通量がぐっと減った
この先には住宅街が密集し、奥の方には小学校や保育所がみえる
段々登り坂となり中盤に差し掛かると高山は膝に手をつき息を整えた
休息を与えていない身体では少しきつい坂だった
登りきったあとは平坦な道が続く
景色も少し変わり、右方向で今度はクリニックやスーパーが見え住民達が行き交っていた
その先、改装工事中のアパートが目に入った
道路に面した入り口では父親とその息子と思われる人物が配送業者の人達と共に3階の角部屋へと荷物を運んでいる
そのアパートの隣は荒れた空き地と思いきや少し感じが違った
外を覆っているフェンスから花壇や噴水がチラチラと見えている
5mほど進んだ先にここの看板があった

○△公園

それを目にした瞬間、高山の瞳孔が一気に縮み、2分ほど立ち止まったあと、また高台に向って歩き始めた


高台の集落、住宅の間にひっそりと佇んでいた待ち合わせ場所の銭湯へ高山は入っていった
シューズを脱ぎ空いている下駄箱に揃えていれようとした時
「高山くん?」
「えっ」
電話と同じ声の人に名を呼ばれた
高山は手をそのままの状態でその人物と会話をし始める
彼女に歩いてここまで来た事を見透かされ、せっかくだからと入浴を勧められた
タオルを渡された高山は背中を押されるようにして男湯へと向う
脱衣所で少し汗ばんだ服と下着を脱ぎ籠へいれ、ハンドタオルを片手に浴室へと入った
空いている椅子に腰掛け、洗顔をしようとお湯を出す
鏡に映った自分の顔は疲れきった表情をしており、今までの苦労を洗い流すかのように白い泡をたたせ 汚れを洗い流した
数回の掛け湯のあと1番大きな浴槽へと足を入れ、ここ1ヶ月のことを思い出していた
長めの入浴から上がると次は髪を念入りに洗う
あまり使ったことのないトリートメントまで終えると、指がふやけるまで掛け流しの温泉に浸かった

「あれ?」
籠にいれたはずの衣類が入っていない
疑問胃思いながらも高山はバッグの中の衣類に着替え髪を乾かしたあとロビーへ出ると、タオルを渡してくれた今野家の娘さんが座って待っていてくれた
「どうだった?いい湯でしょ?源泉掛け流しなんだから!」
「とてもさっぱりしました」
「洋服は明日にでも乾いてると思うから」
「あ…はい」
ハキハキとした彼女は引っ込み思案の高山をよく知り尽くしているようだった
彼女は玄関を指差しながら高山に話を続ける
「あれだけでいいの?」
「ありがとうございます」
「そう、じゃ貸してあげるね!その代わり1つ約束して?」
「どんな約束ですか?」
「毎週月と金はうちのお風呂にはいりに来ること!」
「…」
「…高山くん?あっごめん…迷惑なら―」
「いえ、約束守ります!ありがとうございます…」
高山は心の底から感謝するような顔で彼女に誓いと礼を言ったあと、玄関に置かれたそれらを手に抱えその場を後にした

電話で高山は"テントと毛布を貸して欲しい"といった
そのときも今日も彼女は詳しい事を聞くことはなかった


*


新天地での暮らしは早くも2週間が経過
高山は今、バイト先の敷地内でテントを張り生活している
奥の方は青のビニールシートでいくつも同じような空間が広がていたため、割と入口に近い場所に決めた

昔、小説で読んだことがある
この状況は"ホームレス"だと

この期間で髪も少し伸びた
実家からもってきたコートは質屋に売り、今日の為に新しい服を買った
そして、もうすぐ初めての"バイト"の時間が訪れる


高山は青いベンチに腰掛けてその人物を待った
辺りは暗く少し心細い
数分後、1人の成人男性がそのベンチに近づき高山の隣に腰掛けた
「…もしかして 広告読んだ子?」
「はい……!!」
返事をするといきなり背後から口を抑えられ、驚く隙すら与えられないままベンチへ押し倒されると服を全て脱がされた
「なんだよ、こいつ男じゃねーか!」
「別に気にしねー!誰でもいいんだよ!」
口を抑えられたままの高山は身体を動かし抵抗するものの無力だった
軽々と四つん這いにされ双丘を押し広げられる
剥き出しにされた孔に冷たい液体が塗られた次の瞬間、高山の目が最大に見開いた

何かが自分の中に進入してくる

無理やり犯される汚れを知らない身体
高山は呼吸が苦しくなり、裂けるような痛みが全身に行き渡る
視界を滲ませたまま左を向くと、いつの間にか周り数人の男性集まりその全員が自分の逸物を右手で上下に擦り、湧き水のように溢れ出るソレが高山の視界を遮った

何の快楽も得られず一度に何人もの精液が身体の上に巻き散らされる
生臭い臭気が漂い高山の嗅覚を刺激し、そうしているうちに見下ろしていた人が徐々に去っていく
高山は呼吸を整え起き上がろうとすると、また急に頭を鷲掴みされ元の目線に戻された
これで終わりではなく、新たな人が次々入れかわり高山の未熟な孔を犯し続ける
「声もあげねーな。こいつっ!!」
「感度がわりーんじゃねぇか!?」
「もっとケツ振りな!!」
罵声を浴びては臀部と頬を何度も叩かれる
堅いベンチで擦られた、肩、肘、膝は鮮血を滲ませていた
高山の身体は熱を奪われ、穴という穴からは干乾びた液体がこびり付く
そして、1人の人間が高山の手に何かを握らせると、それを合図に集まっていた集団が解散し始めた
力が入らない身体を起こし、背凭れに掛けてあった洋服を羽織る
高山は朦朧とする意識の中、足をもたつかせながらテントまで戻ると意識を失うように毛布の上に倒れ込んだ

小鳥の囀りで目を覚ました高山は一畳にも満たないその中で頭まで毛布を被り、昨夜のことを思い出してはガタガタと身を震わせていた

怖かった、本当に怖かった
でも、一度も言葉を交わすこともなく、顔を覚えることもなければ覚えられることもない
そして、あの本に書いてあった通りの報酬
高山にとってアルバイトとは、
"欲求を満たすために体力を使って提供する行為"
深夜酒が飲みたいというお客に眠い身体を犠牲にしながら商品を売る
"体力を使うほど報酬金額が多い"
ビールケースで購入したらその分のお金がはいる
"誰にも迷惑はかからない"
相手は満足、自分も満足
読んだことのある小説に自分の行為を重ねながら、この方法で生きていく道を選んだのだった


生きていく為と父に会う為に

[*前] | [次#]
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -