鱗雲



妖怪ポストに手紙が一通届いていた
内容は、祠で遊んでいた子供が何者かにさらわれたという母親からの手紙
「…はぁ…」
高山は、敏感になりすぎている人物からの頼みにあまり乗り気ではなかった
これはなかったことにしよう、と、手紙をポストに戻そうとしたところを偶然にも目玉おやじに見つかってしまった
「今、ポストの手紙を見に来たんです」
別に言わなくてもいいセリフをとっさに口にする
一度開いた中身を再度読み返し、そのまま目玉おやじと共に現場へ向かった


祠にいた妖怪とは化け狸であった
人間の子供相手にただ悪戯がしたかっただけであり、争うことなく話し合いですぐに解決した
「わっ!!」
「どうもありがとうございます」
「いっいえ…お子さんが無事で…よかったです」
事件が解決すると、助けた子供の母親に抱きつかれた
弾力性のある胸に頬が触れる
とても暖かくて柔らかい身体
思わずその母親の背中に手を回しそうになったところで、高山ははっと自我を取り戻し心がズキズキと痛み思わず顔を顰める

早くこの場を去りたい

そう思った高山は数分も経たないうちにその場から姿を消した

高山の心はもう限界だった




その日の夕時
「父さん…」
「なんじゃ?」
高山は目玉おやじと目線を合わせることなく話し出した
「僕…母さんに会いたいです」
「きっ鬼太郎!?」
「確か…地獄にいるんですよね」
「なぜそれを…はっ!!」
目玉おやじが口にしたことが無かったはずの母親の居場所を戸田と松岡の会話から推測した高山は、口走ってしまった父の言葉で確信した
その後、すぐ家を飛び出した高山はカラス森へ向かった

地獄へ向かうために


地獄の入り口にいる門番に、地獄にいる母と会いたいと何度も訴える高山
しかし
「出来ん!!」
「そんなっ!!」
門番に断固拒否され、横丁のカラス森に戻されてしまった
地獄の一方的な対応に絶望しその場に崩れこんでしまう


 どうして

 どうして…!!!

 僕の母さんなのに会えないんですか!

 地獄のものじゃない!

 僕のものなのに!


「うおぉぉぁあああああ!!!!」
高山は込み上げてきた怒りを静めることが出来ず、その場にある木々や石に向かって攻撃を繰り返した

何度も…何度も…


横丁の朝空にうろこ雲が広がった翌朝、カラス森に倒れていた高山は、たまたま通りかかった丸毛に発見され家へと連れ戻されたのだった

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