夏は夜



「随分遅くまでかかったなぁ」
ぼんやり夜空を眺めながら松岡は呟いた
今日は朝早くから砂かけ婆に呼ばれ妖怪アパートの模様替えを手伝っていた
皆総出のはずが…予想通りというか、ねずみ男が来なかった分時間がかかってしまった
全て終わった頃には夜空に月が見え隠れしていた
「早く戻らないと」
松岡は歩みを速め月明かりを頼りに家路を急ぐ
「あ まだ灯りが点いてる」
どうやら父・目玉おやじは息子の帰りを待っているらしい
「もう少しで着きますから」
そんな独り言を言いながらちょうどゲゲゲの森を抜けようとした時

カラン・・・

「ん?」

森の奥で微かに物音がした

 こんな夜中に?
 人の気配ではなさそうだな
 でも、妙な胸騒ぎがする

松岡はその音に誘われるように森の奥へと入っていく
「これは・・・」
松岡が手にしたのは何やらお守りみたいなものであった
霊力で持ち主らしき人を脳裏に描くと、ニヤリと不思議な笑みを浮かべた
「……なるほど…」

 ふふ…
 こんな大事なものを失くしてしまったら
 相当困っているに違いないな
 届けにいいってあげないとね

拾ったお守りを一旦学生服の懐にしまい家へ戻ることにした
「父さん 遅くなりました」
「おぉ待っとったぞ」
「すみません」
「ふぁぁ さて寝るとするかのぅ」
「はい 父さん」
床につくと先ほどのお守りを懐から出しギュっと握り締める
 
 明日が待ち遠しい

そして翌日の夕方
「夕飯の仕度をしてきます」
「頼んだぞ」
そう告げ松岡は家を出た
「さて―」

 食材は既に軒下に隠してある
 これで少しは時間を稼げるかな

松岡は昂る気持ちを抑え昨日の場所へ再度向かった
落し物のお守りを手に、導かれるように森の奥深くへ消えていった


 いま、逢いにいくよ



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