乳房雲



「鬼太郎はちょっと出かけておってな」
目玉おやじに同じセリフを言われ続けて早1週間、時間帯を変え高山の家を訪ねていた2人だが今度は別の理由で会う機会が少なくなっていった
「高山くん元気になってよかったよ」
「………」
「戸田?どうかしたのかい?」
「高山くん…立ち直ったって本当かな…」
「どういうことかな?」
2人は歩みを止め、渡り始めた橋に腰掛けた
「僕もさ…一度母さんのことを考えたら中々頭から離れなかったんだ。その思いを利用されたこともあったし…」
「……」
「だから高山くんもきっと―」
「つまり何かに母の存在を重ね合わせている…最悪の場合は―」
「うん…」
「もう一度高山くんの本心を聞いてみよう!」
2人はさっき来た道を戻り高山の家へとあがると目玉おやじに頼んで高山の帰りを待たせて貰うことにした



「ただいまーって松岡さん戸田さんまで!」
「おかえり」
「やぁ!」
皆と同じく高山も卓袱台につく
「いつ来ても高山くんいなくてさ」
「すみません…ちょっと用事が…」
「どんな用事なの?」
「誰かに会ってるとか?」
「えっ……」
「いでっ!!?」
「あっそろそろ父さんのお風呂の時間だから…僕達戻りますね」
これからというところでタイミングを逃した2人は慌しく高山の家を後にした
「すぐ帰っちゃいましたね」
「そうじゃのう……」


「いきなり抓ることはないじゃないか!」
「君はいつも唐突過ぎるんだよ」
「でも収穫はあったじゃないか」
「ん……今日のことは大目にみるか」
「なんでそんなに偉そうなんだよ!」
「ささっまた明日、風邪には気をつけて〜」
「…!…」
戸田が“自分の世界”から“この世界”に行き来するのに必ずゲゲゲハウスの周りの池を利用しなければならないことを知っている松岡は、嫌味っぽい一言を言い残して“自分の世界”のゲゲゲの森へと帰って行った


*


数日後、2人はまた高山の家で高山の帰りを待っていた
「そういえばさ関係ない話なんだけど…最近こっちの世界で無女が出てる噂があるみたいだよ」
「無女?」
「戸田は知らないのかい?」
「初めて聞いたよ」
無女とは巧みな騙し方をして人間の魂を食らう女の妖怪で、さほど強い妖怪でもないため退治されるのを恐れ表には姿を現さないことが多いとのこと
しかし、素性がよく知られていないためそれ以上詳しいことはわかっていない
「僕も新しい妖怪について勉強しないとな」
「ん?帰ってきたみたいだよ」
いつもよりゆっくりと階段を上がる音がする
暖簾をわけ、中に入って来た高山に向って2人が掛けた言葉は帰ってきた者に最初に掛ける言葉ではなかった
「来てたんですか」
「どうしたんだよ!そのやつれた顔…」
「疲れてるんじゃない?少しは休んだほうが…」
「そんな疲れてなんかいませんよ…僕は今とっても充実してるんです」
そういって高山は布団に倒れる様に横になると、少し息苦しい感じの寝息が聞こえ始めた
「やっぱり様子がおかしい…高山くん、何か僕らに隠していることがあるみたいだ」
そんな松岡の言葉を耳にしながら戸田は高山を見つめ何かを感じ取ったかのように話し出した
「…もしかしてさ、さっき松岡が言ったのと関係ないかな?」
「無女のこと?」
「うん、少し気になるんだ」
「明日内緒で後をつけよう」
事の重大さに気づいた2人は高山のためを想い、ある作戦を考えた

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