ある大晦日の飛脚と岡っ引き



男「お届けものです!」
民「ありがとうございます、いま印を―」
男「そんな面倒なことはいいから!じゃ毎度!」
民「あ…行ってしまわれた」
えっさ、ほいさ、と町中を潜り抜けて手紙や荷物を運ぶ二部くん
早朝から威勢のよい声をあげて駆け巡るその姿は、一番鳥の役割も果たしているかのようで
そんな二部くんが次に向かった先は、松岡さんと高山くんの住む家でした
に「おはよう!はい、手紙だよ!」
松「おはよう二部くん、今日もありがとう」
高「おはようございます!あれ?今日は白い手紙ですか?」
茶封筒が見慣れた彼らにとって「白」とは珍しい代物
興味津々で目を通し始めた彼らでしたが、さっきまでの笑みが嘘であったかのようその場に沈黙が訪れました
気になった二部くんは松岡さんに尋ねると、彼は無言で手紙を渡しました
に「なんだよ!これ!」
怒りを露にする二部くん
そこには、松岡らが経営している蕎麦屋の土地が差出人の所有地であることが書かれてありました
所々に町奉行という言葉を使いなんとも妖しい文面ではありましたが、これが偽りである証拠もなければ信じざるを得ません
そして肝心なのは、罰則として罰金あるいは妻(高山くん)の受け渡しを要求していること
松「こんな大金…僕らにはとても…」
高「……僕、行って来ます」
松「何を言っているだ!高山くん!」
高「…でも、こうするしかないじゃないですか」
松「こんな危険な場所に君を行かせる訳には―」
高「僕は大丈夫ですよ…松岡さんがいつもついてますから…」
声を震せながらそう答えた高山くんでしたが、目尻にはいまにも零れそうなくらい涙が溜まっています
そんな強がる高山くんをそっと抱きしめた松岡さんでしたが、両腕に力を込めることしかできない不甲斐無さに徐々に苛立ちを募らせていました
そんな中
に「僕が行くよ!」
高「二部くん!?何を言って―」
に「僕なら高山くんにそっくりだし、相手を騙せれる!しかも強いしね!でもこの内容はどこかおかしい!これがもし本当だったら開業した時に言ってくるはずだ!」
松「でも、黙っていた僕らにも非はあるんだ」
に「そうかもしれないけど…きっと裏があるに違いない!僕が解決してやる!」
高「待って!二部くん!」

男「ちょっと待ってくれるかな!」

意気揚々に声を上げ家を出て行こうする二部くんに聞き覚えのあり過ぎる声が掛かかりました
に「一部くん!?なんでここに」
一「なんでって二部くん、君が居るからさ」
に「…!え、ちょ…ちょっと一部くん!?」
一「ちょっと借りるね」
松高「どうぞ…」
二部くんを連れ出した一部さんは家の外に出ると二部くんの背を壁に押し付けながらこう言い出しました
一「君の仕事は人の想いを運ぶことだ。解決することじゃない」
に「そんなのわかってるよ!でも…」
一「僕の仕事は何?」
に「…岡っ引き」
一「そう、これは僕がやらなくちゃいけないことなのさ」
言われてみれば道理な話
一「でも今回の事件には助手が必要かな」
に「…!?」
一「そうだな 出来れば高山くんの身代わりが出来そうな人物が適任なんだけど」
に「一部くん…!それって…///」
一「ニヤ…ということで、手伝ってくれるかな?」
に「もっもちろんさ!」

ということで

一「高山くんはここにいても大丈夫。あとは僕らがなんとかするから」
高「ありがとうございますm(__)m」 
松「ありがとう。やっぱり頼りになるのは一部くんだよ」
一「時間は夕方だったね。二部くん早く配達にいっちまいな」
に「おーし!全部速達だー!」
鼠「(…鬼太郎ちゃん、こっちこっち)」
高「(あれ、裏口にねずみ男がいる…)」
松「二部くんが戻ってくるまで腹ごしらえでもどうかい?すぐ用意するよ」
一「ありがとう」

小一時間後

に「ぜぃ…はぁ…終わったよ」
一「さて、さっそく作戦でも―」
松「大変だ!高山くんがどこにもいないんだ!」
ほしの's「ええーー!!?」
さっそく出遅れたほしの'sは高山を無事救い出すことができるのか!

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