手形





「鬼太郎−頼んだ−」
「はっはい…」
「お前達 迷惑掛けるんじゃないよ」
「ぬーぬー ぬっぬっ」


ぬりかべ夫妻が用事を済ませる間だけ子ぬりかべを預かったのだが…


「ぬーぬぬっ ぬぬー!!」


部屋の中に招き入れると早速 卓袱台を取り囲みドミノ倒しで遊びだした
あまりにも元気がよすぎて高山は立ち往生


「部屋は狭いから外へ連れて行こうかな さぁ子ぬりかべ達外へ行くよ」
「ぬーぬっぬっ ぬぬぬっー」


家の周りの草むらに連れて行き とことん遊ばせることに
高山は大の字で寝そべったまま様子を眺めていた


*


「ぬぅ ぬぬぅ ぬっぅー」
「わっどうしたんだい!?」


子ぬりかべが高山の周りに集まり その身体を突きながら何かを言っている
中にはお腹を摩っているものもいた


「お腹 空いたのかな?」
「ぬーぬー!」
「ちょっと早いけど夕飯にしよう」


高山は搭乗員のように手を上げ子ぬりかべ全員を部屋の中へ案内する
囲炉裏の周りに整列させ 木の枝に刺したヤモリを1匹ずつ持たせた


「みんな こうやって焼くんだよ?」
「ぬー?ぬぬー」


やけどをさせないよう24本の手に注意を払いながら高山は焼き加減を見る


「さっ もう焼けたみたいだね みんな手に持って−」

「いただきます!」
「「「ぬぬぬーぬ!」」」


香ばしい味が空腹を満たす
食べ終わると同時に 子ぬりかべが身体を寄せ合い居眠りをし始めた
その様子を見ていた高山も誘われるよう眠りに就いた


*


「鬼太郎戻ったぞ んん?おお…」


目玉おやじが部屋に戻った時 眠っている高山の姿だけがあった
卓袱台の上にはぬりかべからの置き手紙
内容を読んで目玉おやじは状況を把握する


「きっと慣れないことをして疲れたんじゃな」


高山に薄い毛布を掛ける目玉おやじ


「子ぬりかべはお前に感謝しておるぞ」


手紙の後ろには12個の手形が押してあった


「お休み 鬼太郎」






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