Leave



傷心していた高山くんは、翌日にはすっかり元気になっていました
そして今日もいつものように朝からせっせとファイルの整頓や、自動更新をやってくれています
わぁv
今日は僕の描いたアンティークドールっぽい衣装を着てくれている!
これ書くの2時間かかったんだよ?
でも、凄く似合ってるv
「!」
そう声をかけたら高山くんがくるっと一回転してくれた
あははv
そんなにニコニコされたら、大学に送れちゃうよ
じゃ、行ってくるね!
「 ノシ ノシ 」


…今思えば、高山くんと戯れていたこんな生活をもっと楽しんでおけばよかった…


さてさて、最近の僕にもちょっと変化?がありまして
院生の仕事(?)の一つに学会発表ってのがあります
場所は毎回変わりますが、観光地があるような大きな都市で開かれることがほとんどで、絶対教授たちは、会場を抜け出して観光してるに違いない
僕もそっちがいいな…
と、いうか僕も今度それに参加することになって、ここ最近深夜の帰宅が続いてます
部屋のパソコンも以前のようにほこりが被り始めてて…
それよりも、高山くんと朝以外全く会えなくなったことが残念で仕方がありません
今日もまた、歯磨きしながら高山くんの様子を見ています
でも、これはどうしたことだろう
画面には左側に整頓されていたはずのアイコンが何故か真ん中横一列に並べてある…
しかも等間隔で、物凄く違和感だ
疑問に思って高山くんを呼んだら、少し怒っている表情をして、こっちを向いた
と思ったら右側に走っていって

ずさーーーーー!!!

って、並んであったアイコン目掛けて全身で滑り込んできた!
こら!こんなドミノ倒しみたいなことをしたら僕が困るよ!
「   #」
そう、声をかけたら
・・・
また、トライアングルに擬態した…
くぅ   orz
でも、時間がもうなくて…!ごめんっ
「………」
部屋を出るとき、なんだか背後から高山くんの視線を感じたように思えた
この日はとくにそう感じたんだ


そんな生活の中、唯一出来た半休日に偶然にも戸田くんが部屋にやってきた
前から思ってたけど、知らせてないのによく僕の休み時間とか分かるなぁって
勘がいいのかな
そしたらもっとビックリするようなことを言ってきた
「あっそうだ!あのさ、今度近畿に旅行してくるけど、お土産何がいい?」
「え!?偶然だね、僕も来月近畿地方へ行くんだよ」
「そうなの?じゃ、会ったら何かおごって!」
「旅行よりもさ、今年は大丈夫なのかい?」
「全 然 大 丈 夫 !」
「 ξ 」
そんな戸田くんの自信が今の僕には必要だな
せっかくの休みに何をしようかと思ったけど、僕は睡眠を選択した
戸田くんはいつものようにゲームをやり始めて
「あともう少しだから、高山くん頑張って!」
たかやま…くん
あぁ…パソコンつけてあげないと―
でも…今日はもう無理そう… 


目が覚めたら、もう朝日が昇ってて、急いで支度をして部屋を出た


**


そんなこんなで、怒涛の日々があっという間に過ぎ去り、気が付いたらもう明日が出発の日になってた
今日はスーツとかの準備があるから、早く帰宅
そしたら、また来たよ戸田くん
あれ?今度は何か手に持ってる?
「コンピュータセキュリティ?」
「そう!はいこれね」
そういって戸田くんが1枚のCDを僕に渡してきた
「この前来た時、体験版でちょろっとパソコンいじってみたらさ」
「(いつの間に…)」 
「見たこともないウイルスが沢山検出されたんだ」
「え?そんなにも?」
「うん だからこれあげるよ!」
「……どうも」
「じゃ、明日〜もし会ったらおごってね!」
「…………ハイ」
そういって戸田くんは帰っていった
でもなぁ…
「ウイルスならこの間高山くんが退治してくれたのに」
そう思ったんだけど、やっぱり詳しい人には逆らえなくて、僕は久しぶりにパソコンの電源を入れた

ジジジ…

うん
たしかにまだ起動が重いな…
実は、高山くんには言ってないけど…
あのワームを退治した後、何か変わったことがあったかというと特に何もないんだよね
やっぱり、体力が限界で退治できてなかったのかな

ジジー

あ、やっと画面ついた
「高山くんーー!」
「……!」
「久しぶり!ごめんね、最近会えなくて」
「 だいじょうぶ 」←ペンで書いた
「でも、また明日から4日間出かけるんだ」
「 コクン 」
「帰ってきたらさ!また時間できるから沢山遊ぼうよ!」
「 コクンv コクンv 」 
「あとね、これなんだけど…」
「 ? 」
「なんかね、僕のパソコンウイルスだらけみたいなんだ」
「 コクン 」
「で、これをインストールするといいらしくて」
「 ? 」
「あ、今からいれるね」

ジー   ジー

「えっと…okを押せばいいかな」

カチカチ

僕が画面を眺めているように、高山くんも体育座りをして操作boxを眺めている
そっくりな僕たちの姿、ちょっと滑稽かも
このbox内の青いバーが右までいったら完了らしいね…
そうだ!
その間、久しぶりに高山くんと遊ぼうかな!
「高山くん何す―!!」
高山くんに目線を向けた僕は、口を開けたままにするぐらい本当にビックリした!
だって…高山くんがいつの間にか白黒になってたんだ
それだけだったけど…ちゃんとこっち向いてくれた
これもウイルスのせいなのかな…


限られた時間で僕はあることを実践した
前から考えていたんだけど、時間がなくて
いつものソフトを起動して、手元にあるものを見ながら僕は黙々と描いた
高山くんは描きあがるのを待っていてくれて、僕のペン先を動物のように顔全体で追ってたv
「出来た…!」
「vvv」
白黒の高山くんが物凄く喜んでくれているみたい
具現化したそれと手を繋いで、画面を歩いたりしてるv

僕が書いたのは、高山くんと同じ衣装を着た“僕”

僕たちには、どうしようもない隔たりがあって
鏡のように手を触れているつもりでも、それは液晶の画面で
ちょっとお互い切なかったよね
でも、これで高山くんは「僕」と一緒にいられるよ!
「 ありがとう 」←口パク
「!!」
何故か口の動きがそう見えて、僕は雫を1滴流してしまった
「高山くん」
あと、もう少しで完了だね
これでもう不自由なく僕のパソコンで“僕”と一緒にいられるよ
一緒にウイルス退治できるし!
一緒に整理整頓できる!
今度は3人で遊ぼうね!
「vv」
「v」
手を繋いだ2人がニコニコと僕の方を見てる
よいしょと…ちょっと携帯で写真をっと…
 
 カシャ

いいかい?
“僕”はしっかり高山くんを守るんだよ?
「 コクン 」
なんか、変な感じだけど…

ジーー

「あっ 終わったね」
操作boxを消して、再起動っと

カチカチ


*


その後、僕は高山くんと“僕”を見ることなく、学会へ出発することになった
きっと新しいソフトの整理を裏側でやってくれてるんだね
ふふv
帰ってきたらデジカメの写真も一緒に整頓してもらおうかな!
移動中、携帯の待ち受け画面を見ながら、僕はそんなことを夢見ていた


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