Recollection



僕がこの場所で最初に見たもの
それはココから少し離れた所にいたマスターの顔でした


**


初めて目が覚めた時、正面だけが何も見えない不思議な空間に僕はいました
周りには数個のアイコン…
あ、そうか…!
ここが僕の新しい住まいなんだ!
そう考えたらワクワクしてきました(≧∇≦)


僕は早速、自分のプロパティを開いてあることに気が付きました

NAME:高山

そう!僕に名前が付いたんです!!嬉しい(≧∇≦)
きっとこのパソコンのマスターがつけてくれたんだ!
一体どんな人なんだろう…早く会いたいな
でも、恥ずかしぃ…モジモジ…
あ!じゃ、こうしようかな

 〓

僕は履いている下駄を一足、わざとデスクトップ上に脱いで置くことにしたんです!
マスターが僕の存在に気づいてくれないかなぁ〜っと思って
そしたら、その日!!
マスターがマウスで僕の下駄を触ってくれたんです!!
やった!マスターが僕の存在に気づいてくれたんだ!ヽ(^0^)ノ
別の日もマスターは僕の下駄をクリックしたりして遊んでくれます!
僕は嬉しさのあまりちゃんちゃんこをブンブン振り回して喜びを表現しました♪

ビューーンっ!!

あ、あれ?
ちゃんちゃんこがマスターのファイルと一緒に僕のところに戻ってきました
これは大事なファイルなんじゃないかな?

……!!!

あ!マスターがこのファイルを探しているみたいだ!
いけ!ちゃんちゃんこ!
このファイルをマスターのところに返してくるんだ!

ビューーンっ!!

あ…
マスター、今度はちゃんちゃんこに興味をもったようです
早く、僕に興味を持ってくれないかなぁ(≧∇≦)


*


マスターのパソコンに慣れ始めた僕は、やっと最初の仕事を始めました
ファイルの削除!!
「ビリビリ…!!」
ファイルの整頓!!
「トントン…!!」
ちょっと疲れた〜
「ぐぅ…ZZZZzzzz」

そんな事をしていたある日
何も見えなかった正面から僕の名前を呼ぶ声が聞こえたんです!!
透明感があって落ち着きのある…ちょっと掠れた声
きっとマスターだ!
しかも名前も名乗ってくれた!!
松岡さん…っていうのか
とっても嬉しかったけど、ビックリしちゃって…
僕はアイコンの後ろに隠れました
だって…姿が見えなくて、いきなり声だけ聞こえてきたんだもん…
ビックリするでしょ?
でも、マスターは隠れてないで出てきてって、そしてどんな風に見えているかって聞いてきたんだ
……困った!激しく困ったよ!!
だって前が全然見えないんだもん><
だから、僕は両手を後ろに組んで左右にユラユラ揺れてみた
「見えないよ〜」っていうのを伝えるために
そしたら…

見 え た !!!!

マスターの顔だけじゃなくて、正面の映像が見えたんです!!!
わぁ〜凄い!
……あれ?
こんなにしゃべっているのに…反応がないな
もしかして、僕の声は聞こえないのかな…
じゃ、絵を描こうφ(.. )
マスターの顔は…こうで…こんな髪型で…φ(.. )
そんな感じで書いてたら

 『絵上手だね』

って、ほ め ら れ た!!!!!!
マスターにほめられたよぉぉ!!嬉しい!
よし!たくさん花を書こうっと!!
もっと話したかったけど、『そろそろ電源落とすね』って言われたから今日はここまで!
また明日のお楽しみです♪


*


僕の役目は、文字などでイメージされたものを具現化することです
僕にはいろんな役目を持った“仲間”がいます
もちろんアプリを使用不可にする“仲間”もいます

今日は仲間の一人に出会いました
PCのファイルを吸いこんで消し去る“野槌”です
マスターの大事なファイルをものすごい勢いで吸い込んでいます
これは大変だ!
おい!野槌やめるんだ!これは吸っていいものじゃないんだよ!

 ごぉぉぉぉ!!!

野槌は我を忘れたかのように僕の声を聴こうとせず、ファイルを吸い続けています
くそぉっ…こうなったら意地でもとめないと!
僕は野槌の背中に飛び乗り、得意の体内電気をくらわせました!

 ビリビリビリィィィ!!!

野槌は吸い込んだファイルを吐き出しながら、飛び跳ねるように後ずさりしています
はぁ、はぁ…
ちょっと、電気を放電しすぎたようです…orz

 『高山くん…!どうしたの!!?』

はっ!マスターが僕の名前を呼びました
立つには体力が回復してなくて座ったまま声がした方向を向くと、倒したかと思っていた野槌がまた僕の方に向かってきました
どうしよう…もう少しだけ回復の時間がほしい…
そしたら、マスターが野槌の周りに草を生やしてくれました
…でも野槌は一瞬でその草を吸い込んでしましました
今度は僕の周りに鉄柵を書いてくれたマスター
マスターは僕の回復のために時間稼ぎをしてくれてるんでしょうか
とてもありがたいですv
よしっ次こそは一瞬で倒すぞ!!
僕は最後の力を振り絞って、野槌の体を髪の毛で雁字搦めにした後、最大出力の体内電気をくらわせました!

 !!!!!

目を開けたころには、野槌はいなくなっていました
吸い込んだファイルも全部元の場所に戻ってる…よかったぁ〜
マスターも喜んでいるvでもさすがに疲れちゃったな……onz
そうやって寝転んでたら、マスターに布団を敷いてもらい毛布までかけてもらいました
ありがとうマスターv
これでゆっくり休めそうです


*


野槌を倒した翌日、起きたらアンティークドールっぽい衣装が置いてありました
きっとマスターが準備してくれたんだ!
今日はこれを着てはりきって仕事します!

でも、ここ最近仕事の量も減ってきました
マスターの声も…顔も…見る機会が減ってきました
少し寂しいな…また一緒に遊びたいのに
…ちょっとだけマスターの気を引いてみようかな

久しぶりにPCの電源が入ったとき、デスクトップのアイコンをわざと真ん中に等間隔で一列に並べてドミノ倒しみたくやってみました
思った通り、マスターは声をかけてきました
もっと声を聞きたかったからまたちょっと困らせるようなことをしてみました

けど、今度は声がかかることなく、マスターは姿を消してしまいました
楽しかったマスターとのやり取りが走馬灯のように蘇ってきて、なんか自分が消えてしまいそうな感じでした


*


マスターから嬉しい話を聞いた今日、僕はできれば会いたくなかった“仲間”とまた会ってしまいました
マスターは躊躇することなくその“仲間”をインストールし、僕はその成り行きを見守っていました

 ハ…ス…チ…ホ…プ…ナ…ポ…ゲ…チ…メ…

“仲間”は、マスターのPCから僕を消し去る呪文をゆっくり唱え始めると、最初にカラーコードが削除され僕は白黒に変化しました
マスターはすごくびっくりした顔をしてました
そのあと、マスターは僕のために、僕と同じ服装をしたマスターの分身をプレゼントしてくれたんですv
さて、僕の最後の仕事だ
この分身を具現化して…っと
おぉぉ…さすがマスター!この分身…あ、いや松岡さんと呼びますか。松岡さんはマスターとそっくりですvv
お礼をいわないと♪

お礼を伝えたあと、画面の先が真っ黒になっちゃってマスターの姿が見えなくなっちゃいました 

もう時間なんですね
そうだ!松岡さん、一緒に手をつなぎましょう
そしてマスターにとびっきりの笑顔をみせましょう
マスターの声が聞こえなくなるまで


**


僕がこの場所で最後に見たもの
それは僕の隣にいた松岡さんの笑顔でした





次に目が覚めた時、僕はどんな場所にいるんでしょうか
そして次こそ突き止めたいです
僕は削除され続ける存在なのかを

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