【赤い目玉】砂かけ婆




ポタ… ポタ…

「ん?なんじゃ…雨漏りか?」

目玉おやじの頭上に滴が一定の間隔で降ってくる
その水滴を小さな手で払いながら 後ろ斜め上を向くと

「きっ鬼太郎!?」
「うぅ…とぅしゃん…いたぃよ…」

右目を真っ赤に充血させ 涙を流す鬼太郎の姿があった
痒いのか右手を丸めて何度も擦る仕草をする

「擦っては駄目じゃ!眼球に傷が付いてしまうわい」
「うう…」

ポタポタ…ポタポタ…

小さな瞼から流れ出るソレは もはや滴どころではなくなっていた
目玉おやじは鬼太郎を真新しい筵の上に寝かせ 部屋に偶然あった2枚の薬草を瞼にのせた

「このまま待ってるんじゃ すぐ戻るからのう」
「ぅ……はぁぃ…」

鬼太郎の元気がない返事を聞いて 目玉おやじは部屋を出たのだった


*


鬼太郎は 今―
"痒み"ではなく違うものと戦っていた

「とぅしゃん……とぅしゃん!…」

頭の隅では分かっているはず…と思うのだが
鬼太郎は寂しさと孤独感のあまり いつも隣にい続けた人物の名を呼び続けた
そんな時

「何を泣いておるんじゃ?」
「!!?」

誰かが部屋の中に入ってきた
唯一の視界を遮られている鬼太郎はその姿を確認することができない
その人物が鬼太郎を抱きかかえると 幼き人は目を瞑ったまま首を小さく振り抵抗した

「やーっとぅしゃん!やーやーっ…」
「お婆がそんなに怖いか?」
「ううぅ…ひっ……」
「わしは砂かけ婆じゃよ おやじ殿はもうすぐ戻ってくるから安心するんじゃ 鬼太郎…」
「…っ……」

背中を優しく摩られながら 自分の名前を呼ばれた幼き人物は段々大人しくなっていく
そして
右手で薬草を除け 痛む右目をゆっくりと開けると
その瞳には 自分と同じく 目玉の赤い人物が映り込んだ
すると 鬼太郎は1枚の薬草を手にし

「……はぃ」
「ん?ああ〜わしは元から赤いんじゃよ」
「?……はぃ」
「お前さんは心が優しい子じゃのう〜」

砂かけ婆は鬼太郎から受け取った2枚の薬草を大事そうに懐へと終い込んだのだった


そんな2人の出会い






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