【恩人】蒼坊主




「一体何処に行ったんじゃ…」

目玉おやじは川原の土手に座り がっくりと肩を落としていた

「んんーー!!」
「なっなんじゃ!?」

誰かが隣で昼寝をしていたらしく 藁だと思った笠が動き出す

「さてと…身体も休めたことだからな そろそろ次の場所にでも―」
「もしやお主は…」
「んあ!?」

その人物と目玉おやじの視線が合った

「蒼坊主!!」
「目玉のおやじさん!!」
「久しぶりじゃのう!」
「いやぁ〜ご無沙汰で!あれ…たしか息子がいたような…」
「そうなんじゃがな…」

鬼太郎が突然姿を消してしまい 2日程眠れぬ日を送っていたのだという

「俺が責任をもって探してきます!」
「すまんが頼んだぞ 蒼…」

そういって蒼坊主は六角杖を手に歩き出した


*


「おーい!鬼太郎!!」

両手を頬に当てメガホンのようにして声を響かせるのだが 反応は全くない

「どこいったんだ?」

好奇心旺盛な年頃
きっと何かに付いていったままで戻ってこれなかったんだろうと予想した

「ん!?」

妖気を感じ取り その方角へ足を向ける
そこでは

「何だ!あれは…!?きっ鬼太郎!?」

ぐったりと倒れ込んだ鬼太郎が 大きな化け狐に飲み込まれようとしていた
蒼坊主の上げた声に反応した妖怪は攻撃を仕掛けてきた
正面からくらいながらも額の目を開き 幻覚をみせたまま得意の封印札を妖怪に目掛けて投げつける
退治は無事成功し 蒼坊主は慌てて駆け寄りその身を抱き寄せる

鬼太郎は間一髪で蒼坊主に命を救われたのだった


*


少し場所を変えた近くの木陰に2人の姿があった
蒼坊主は笹の葉に湧き水を汲み 鬼太郎の小さな口に流し込む
口角から漏らしながらも 気道へ入ったそれがむせを引き起こし鬼太郎の意識を取り戻させた

「…ぁ…」
「大丈夫か!?鬼太郎!!」
「…?」
「俺は蒼坊主ってもんさ!大丈夫 俺はお前の見方だ!」

鬼太郎はコクンという頷きと共にまた瞳を閉じた


*


「おやじさん 随分と待たせちまった」
「ん?蒼…!!?なんじゃ 傷だらけじゃぞ!」
「ちょっと一戦やりあっちまって へへ」

蒼坊主の背中には瞳を閉じたままの息子の姿があった

「おぉ…鬼太郎!!」
「…」
「大丈夫 眠ってるだけさ」
「無事でよかった…」

蒼坊主は膝を折り目玉おやじを手に乗せ 自分の肩に乗せた
そして 目玉おやじは鬼太郎の頬を何度も何度も撫でるのであった

「おやじさんよ 家も構えないで生活していくのは危険だぜ?」
「そうだとは思っているのじゃが…安心できる場所がなかなかなくてな…」
「…おお!そうだ!あそこなら!」
「どうしたんじゃ?蒼?」
「妖怪横丁ってとこさ!そこは妖怪の楽園なんだ そこに案内するぜ! 呼子ーー!!」

蒼坊主は2人を連れ 妖怪横丁へと向かったのだった



そんな2人の出会い






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