【蒲の穂】ねずみ男




「怪我をした動物はな ガマの穂に包まりその傷を治したんじゃ」

沼に群生して生える蒲を見ながら目玉おやじが鬼太郎に教えた

ぐぅぅぅぅ…

「おっと…今日の夕飯でも探しに行くとするか」
「はぁい」

沼の付近を下を向いて歩きながら 浅い水中で動きのとれなくなった小魚を探す

「おっあそこにおるぞ」

目玉おやじがフナを1匹発見
鬼太郎は慎重に近寄り そっと両手で救う事が出来た

「あっ…」

と 次の瞬間
取ったばかり獲物を何倍も大きな手に奪われてしまった

「おいおい ここは俺様の縄張りだぞ?」
「なわ…ばり?」
「とっとといった しっしっ」

黄色いマントを纏った半妖怪に手で払われるような扱いをされる
その意味を知っている鬼太郎は何も言わずその場を後にした

「今夜はここで野宿しよう」
「はぁい」

結局 食べ物に有りつくことが出来ず夜も更けたため寝床に就く事にした
その時である

ドテ! ビチビチ…ガサガサ…

「なっなんだ!!?」
「!?」

活きのいいフナとザリガニが2匹 鬼太郎たちのいる洞穴に放り込まれた
鬼太郎は身を起こし誰の行いなのかを確認すると 頭巾を被った影だけが小さな瞳に写り込んだ
親子はとりあえず獲物の側に近寄る
毒見をしているのか
鬼太郎はそれらを手に取ると匂いを嗅ぎ始めた

「一体誰が…」
「……!!」
「おい!鬼太郎!夜道は危険じゃぞ!」

鬼太郎は沼の方向へと一目散に走っていった


**


鬼太郎は今
夕方に会った半妖怪の後ろを付いて歩いている
それまで歩みを止めなかったその男が急に立ち止まり 後ろを向いてしゃがんだ

「なーんで付いて来るんだよ」
「……これ」
「なんだよこれ 蒲の穂じゃねーかよ」
「手…けがしてる」

よくみると男の指にV字の掠り傷があった

「あのエビやろう!よくもねずみ男様の指を挟みやがったな!!」
「………」

鬼太郎は無言で差し出したまま

「悪ーな」
「………」

「ありがとよ」
「………v」

鬼太郎は最後まで無言のまま 父の待つ洞窟へと駆け足で戻っていった




そんな2人の出会い






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