恋をしたら
選べない。彼女の口癖だ。今日も日がな一日中部屋から出ずに布団を被ったままゲーム機としか交信していない始末だったから、スーパーまで買い物に出掛けさせた。特に今必要なわけではない、つけおきの洗剤とか替えの電球といった、探すのに時間のかかりそうな物。文句を言いながらも二時間かけて彼女が戻った時には、その隙にシーツを洗っておいてやった。久々だ。肌寒いがよく西日の入る窓から、白いシーツがはためいているのが見える。

「こんなにいりませんよ」

彼女がいさんで抱えて帰って来た、近くのホームセンターの袋には、大小十種類近い電球がごろごろと詰め込まれていた。その内の一つにいたっては途中ぶつけでもしたのか大きなヒビが入っている。玄関に靴を投げ散らかして、しかしそれを揃えようともせずに言う。

「どれかわかんなかったんだよ、だから適当に買ってきた」
「出掛ける前に渡したでしょう、使い終えたやつ。型番も書いてたのに」
「はあ?あれゴミじゃなかったの」

彼女は呆れたようにまじまじと僕を見つめて、唇を尖らせた。そして事も無げに台所へ向かい、その左腕に抱え込んだもう一つの袋の中身を、大事そうに冷蔵庫に仕舞い始めるものだから、今度は僕が呆れないわけにはいかない。

「で、それは」
「だから選べなかったって言っただろ」

早速お気に入りの梅酒を開けて、彼女はそれら、ビールやら焼酎やらワインやら数え出せばきりのない酒類の数々を、今度は丁寧に冷蔵庫に並べる。満足げに梅酒の缶を手に取って、僕が止める間もなく、シーツをかけていない布団にさっさと潜り込み、

「やっぱお前いなきゃ無理」

などと宣ってくれるから、布団から引っ張り出すことも、つけおきの洗剤を忘れていると釘をさすことも、なんだかばからしく思える。

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