「うわ、負けたー!」
「あんたがへたくそなのよ」
彼が心底悔しそうに声を上げる。此方に向かってくる画面の中のゾンビを、ちゃちなピストルで手当たり次第にやっつけていくゲーム。私は初めてだったけど、このゲームが一番面白いのだという彼に大差をつけて圧勝した。だって彼ときたら照準も定めないままめちゃくちゃに撃ちまくって、それにゾンビが不意打ちで現れるたびに腰が引けているのだ。私はベンチに座って彼の後ろ姿を眺めた。まだ納得がいかないらしい。画面の中で点滅するゲームオーバーの文字に文句を言う、その背中が猫背気味で、子供みたい、そう思った。私たちは寮から一番近いショッピングモールのゲームセンターに、かれこれ三時間以上も居座っている。UFOキャッチャーで大量に取り出し口に落ちてきた体に悪そうな駄菓子を食べながら、コインをとったり、スロットゲームをしてみたり、ゾンビを倒したり、ベンチで休憩しては塾の先生たちを話の種に笑ったり、彼とダブルスを組んで画面の中のテニスプレイヤーに勝負を挑んだりした。(結果は惨敗だった。)
「勝呂たち帰って来るな、明日」
「へえ」
「しえみも明日は店番じゃねえって」
「…ふうん」
彼が私の隣に座って、サンダルの両足をぶらつかせる。相変わらずの相槌しか打てない私だけど、今日は楽しかったって、そう伝えられるといい。早く明日になんねえかなあ、くすぐったそうに笑う彼は、誰彼の友達。