甘党の舌にはお似合いね
やはりと言うべきか、ディーノの見事な食べ散らかしっぷりを見て、スクアーロは失笑を禁じ得なかった。本来なら子どもの一人や二人抱えていてもおかしくない年齢だけに、見兼ねたオレガノが何も言わず自らのナプキンで食べかすを拭き取る様は甚だ情けない。一方のビアンキは特に呆れた様子も無く、黙々とスプーンを動かしている。見慣れているのかもしれないしはたまた諦めているのかもしれないが、それはどこか虚しいものがある。自分なら真っ先に叱り付けるだろう。スクアーロは胸の内にひっそりと悪態を吐いた。今しがた鼻の先で笑ったばかりであるが、オレガノがそのナプキンを至極当たり前のように自ら食べ終えたスープ皿の陰に落ち着けたのを見て、怒りすら沸いて来るのがわかる。誰よりテーブルマナーに五月蝿い剣帝スペルビ氏は、パスタを器用に絡め取りながら小さく舌打ちするにとどまった。その行為にビアンキが眉を寄せたことは、向かいに座っているオレガノのみが知ることとなる。唯一、一切の状況を把握しているオレガノは、二大剣帝の片割れと名高い男と毒蠍の異名を持つ女のただならぬ険悪さと、くるくる表情を変えて面白そうに話すキャッバローネの十代目ボスを見比べて、しかし穏やかに笑った。

「そういや俺、デザート食べたいかも」
「よく口が疲れないわね」
「喋りすぎなんだぁ、てめぇは。だから口角が緩んでぽろぽろ食いかすが落ちる」
「スクアーロの言う通りだわ、あんたって男の癖にほんとお喋りでうんざりする」

似たような語調でまくし立てる二人に、ディーノは若干気圧されたかに見えた。慌ててオレガノの方を見遣る姿はまるで母親を探すそれである。オレガノはと言うと空になった陶器のティーカップを名残惜しそうに見つめて、ふと思い付いたかのようにウェイターを呼び止めた。

「チョコレートプディングを二つと、それからアッサムティーを」

一同の驚きに満ちた眼差しを受けて、オレガノは大袈裟に肩を竦めて見せた。スクアーロが何か言いた気に口を開きかけたが僅かに躊躇った側から、くすくすと笑みを零したのは他でもないビアンキである。

「ちょっと待って、プディングは二つじゃなくて四つよ」

彼女らしい言い草に隣のスクアーロが大きく頷いたのを見て、ディーノは思わずぷっと吹き出した。



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