べたべたごろん
萎びたそれを引き抜いた瞬間から、俺はいつもしえみに背を向ける。本当は腕枕だってしてあげたい、こしょこしょ擽りあってじゃれつきたい、そしていつの間にか朝を迎えていたいのだ。抱きしめあって。それなのにしえみときたら、まるで冬眠から目覚めたリスみたいに絶え間無く瞳を瞬かせ、さっさとベッドから抜け出しては、シャワーを浴びて髪を梳かし、お出かけする時と同じ綺麗な着物を着付け、それから例え時計が午前二時を示していたとしても窓を開ける。数分前の行為が嘘に思える。だから俺は彼女に背を向けるのだ。ずっと余韻に浸っていたい。頭の中の彼女はまだすっぽんぽんだ。

「あちいよ、しえみ、窓閉めてクーラーつけて」
「空気がこもっちゃうでしょ」
「いいじゃん」
「燐、パンツ履いて」
「なんでそんな冷たいんだよー、薄情者ぉ」
「今日は何色にする?赤は洗濯に出しちゃったからオレンジか緑」
「緑」
「ねぇこれ、お尻のとこにある英語のロゴが子どもみたいでかっこ悪い」
「…じゃあオレンジ」

しえみが笑いながら近付いてくるのがわかる。俺は背を向けたまま、彼女が俺の顔を覗き込むのを待っている。その途端引っ掴まえて、ベッドに引きずり込んでやることは、彼女だってきっとお見通しなのだ。


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