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大晦日の昼間。
突然響き渡ったのは低い声だった。

「おい、デイダラ。
お前、何をしている?」

驚いて振り返ると、見慣れたツーマンセル。
殺気立った目をしたイタチの旦那とヤケにニヤニヤした鬼鮫の旦那が立っていた。
ふたりの黒地の服に赤い染みが増えているのはきっと気のせいではないのだろう。

「脅かさないでくださいよ、旦那…
新しい作品が生まれそうなんですよ、うん。」

「ほぉ、アナタがこれを…スミレさんのために、ねぇ?」

「だ、旦那っ…!なっ…何を…」

言葉にならないオイラを見て、イタチの旦那は一つ溜め息をつくと、手元を覗きこもうとしていた鬼鮫の旦那を引き連れて、部屋に戻っていった。

「…アイツらの機嫌が悪い時って、マジで怖ぇんだよな、うん。」
だけど鬼鮫の旦那の言う通りだった。もう少しで完成するんだ、オイラの最高傑作が。

その為に、今夜、スミレにはもう約束まで取り付けてあるんだからな。

………

「…は?それでスミレは大丈夫なのか?」

夕方帰ってきた角都の旦那曰く、町医者から出てきたスミレの姿を見かけたらしい。
話しかけることなく人混みに紛れてしまったから、様子はよくわからない、と。

そう伝えられた途端に体が動いた。
今夜のための最高傑作を持つと、そのまま玄関に向かって駆け出していた。

「おぉい、デイダラ。お前どこ行くつもりなんだよ。ジャシン様への祈りの準備は…」

「すんません、ちょっと俺、用事ができたんすよ、うん。なんで、旦那、あとのこと頼みますよ。」
返事も聞かずに飛び出した…けど後で謝ればいいか、うん。

オイラが大慌てで家にやって来たことで、スミレの方がずっと驚いていた。

寒いので家に入れてもらってお茶を淹れて渡される。
病人のくせにそんな気を回さなくていいだろと思ったりするんだけどな、うん。

ふたりで暖まりながら話を聞けば、スミレは軽い風邪らしい。

でも夜の約束は無しだな、スミレの風邪を悪化させるべきじゃねぇって、うん。

考え事をしていると、どうも配慮が足りなくなっちまうらしく、ここでスミレが気づいてしまった。

オイラが持ってきていたモノ、にだ。

色気も糞もねえけど、その場で開けて見せてやる。

「わぁ…可愛い、竜?」
手のひらサイズの竜は円らな瞳をしていて、ぬいぐるみの粘土のよう。
頭を撫でて遣れば首を傾げる姿を見せる。というかそう仕掛けたのはオイラだからな、うん。

すごいとか柔らかいとか可愛いとか感嘆の声が聞こえるけど、オイラにはこれくらい当たり前だっての。

「ありがとう、デイダラ。大切にするね!」

その嬉しそうな笑顔がオイラの心を離させねえように、一気に満ち足りたものにしてくれた。
まるで縛られてるみたいなんだよな、うん。

無理させないようにそっと肩を寄せると熱っぽい顔が近づく。
オイラの肩に頭を凭れかけさせて、スミレの肩に腕を回し抱く。

旦那たちには絶対秘密だけどな。
オイラこれだけですげぇ幸せなんだぜ、うん。

(心配しなくても来年も、再来年もずっと一緒に祝ってやるからな、うん。)




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