小さな恋人(前編)

『そろそろみんな帰ってくるころかな』
スミレはそう言って、皆が帰ってきたらすぐ夕食を食べられるように仕度を始める。
今日はスミレを除いて全員が任務に行っている。
もちろん彼氏の飛段も。
きっとまた儀式だーって、角都に迷惑かけてんだろうな…
そのとき…

―タタタタタッ
リビングから何か足音のような音が。でも誰もいないはず…
『何?』
スミレはキッチンから出て様子を伺う。

『なんだ、やっぱり誰もいない』
「よォ!」
スミレが振り返るとそこには、小さな男の子がひとり。
『だあれ?』
ってか…どうやってここに入ってきたのかな?
たぶん4、5歳くらいだと思うけど…
男の子は暁のマントを着、いや引きずっていて、
銀色の髪、そしてピンクの瞳をしている。
もしかして…

『アナタ…飛段…?』
男の子はニィっと笑った。
「よく分かったなァ!さすがオレの女だぜ!ゲハハハハハッ!!」
『うそっ…』
「嘘じゃねーよ」
子供になっても、下品な笑い方と大きな態度は変わっていなかった。

『飛段…可愛いー!!!』
スミレは飛段を抱きしめる。
「だろ、オレけっこう可愛かったんだぜェ?」
飛段も短くなった腕をスミレの背中に伸ばす。
『…あっ、いけない』
料理を火にかけたままだったのを思い出してスミレはキッチンに戻った。

「ハァー、腹減って死にそうだぜ」
『もうちょっとでご飯だからね』
無意識ながらも、飛段に対する声掛けは子供に対するそれになっている。
あれ、そういえば角都は一緒じゃないの?
なんで小さくなったんだろう、
と思いながらもてきぱきとご飯を作るスミレちゃん。


「「「ただいまーぁ」」」
『おかえりー』
みなさん揃ってお帰りです。
スミレちゃんがご飯担当の日なので機嫌よく帰ってきました。
「おいスミレ…誰だ、その子供」
デイダラの言葉に皆が視線をスミレから下に下ろす。
「「「…誰だぁーーー!!?」」」
「誰か分かんねーのかァ?」
「まさか…スミレさんの…隠し子では…」
「せいかーい」
『違うっ!』
「だがこのガキ…絶対に見たことあるな」
「オレもそう思うが…」
「分かった!オレとスミレの子供だ!!」
『えぇー』
「「「何ぃーーーー!?」」」
…出ました、リーダーのぶっ飛んだ発言。

「こんなに可愛いんだ、オレとスミレの子に決まってる」
うんうん、とひとり頷くリーダー。
『いやいや、わたしリーダーと一度もそういう関係になったことないから』
「そうか?オレは何度もお前を抱いたぞ?夢の中で」
リーダーはハハハと幸せそうに笑う。
「いい夢が見れるといいわね」
「ぐはぁっ」
紙手裏剣がリーダーに突き刺さった。
『実はね…』
スミレが本当のことを話そうとしたそのとき

「飛段…勝手に帰りおって…」
角都が戻ってきた。
「お、角都。わりーわりー」
「「「…飛段!?」」」
「やっとかよ」
角都の話によると、任務で戦った敵が見たこともない術を飛段に使ったらしい。
それで体が縮んだとのこと。

「オレが奴等を問い詰めて、その術について聞いてきた。術の効果は、かけられた者の賢さに応じて持続時間が決まると言っていたが」
「賢い方が長いのか?」
「それは分からんが…オレは10分もすれば元に戻った」
「「「あぁ」」」
「何てめーら納得してんだ!?」
気の短いのも相変わらずで。
『大丈夫、わたし飛段がバカでも大好きだからね』
「「「(さり気にスミレ、飛段のことバカにしてないか?)」」」
「オレもスミレ大好きだぜェ」

スミレは小さな歩幅で駆け寄ってきた飛段をだっこする。
「あっ、汚ねぇ飛段のヤロ―!爆破してやる、うん!!」
『こら、小さい子にそんなこと言っちゃダメでしょ!デイダラ』
「そういえばガキの傀儡は持ってなかったな…」
『サソリもダメっ!』
スミレちゃん、すっかりママみたいになってますね。

「角都さん、その敵ここに連れてきてください。…オレも小さくなりたい」
「無駄だ、奴等は始末してきた」
「それにイタチさんだったら、ほんの数分で術が解けてしまいますよ」
「そ、そうか?」

まんざらでもないイタチさん。
そんな皆の様子をスミレにだっこされたまま見ている飛段。
「オマエらバカじゃねーのォ!?バーーカァ!」
飛段はあっかんベーをして皆をバカにしている。
「「「てめぇ…」」」
『やめてぇーー!!』
「ゲハハハハハッ!!」


その日はてんやわんやだったけど、夕食を食べてお風呂に入ると飛段も落ち着いたよう。
…まだ子供のままだけど。

『今日は大変だったなぁ』
スミレが自室のベッドで寝ようとするとドアが開いた。
そこには飛段が。
『どうしたの?寝れない?』
「んー、その…一緒に寝てもいいか?」
恥ずかしそうにしている小さい飛段が可愛くて、スミレは思わず笑顔になる。
『いいよ。こっちおいで』
手招きすると飛段はあどけない笑顔でベッドに来た。
スミレは布団を上げて、飛段を入れてあげた。

『今日は大変だったね』
「でもオレ、スミレが一緒ならずっとこのままでもいいかもな」
『でもこのままだと…エッチできないよ?』
スミレの言葉に飛段は凍りつく。
『ハハハっ。…とりあえず、今日はゆっくり寝よう?』
スミレは飛段の頭を撫でる。
「そうだな」
『おやすみ、飛段』
スミレは飛段の額にキスをして目を閉じる。
二人は親子のように寄り添って眠った。


―次の日
気を利かせた鬼鮫が子供服を買ってきてくれたので、服には困らずに済んだ。
デイダラとスミレで飛段を着替えさせる。
「なんだよこの服についてる絵はよー」
「こうしてるとオイラ、スミレと結婚したみたいな感じだぁ…うん」
デイダラは目をつむって幸せに浸っている。

「オレはお兄さんでいいから仲間に入れてくれ」
「…私も」
「別にいいぜ。でもスミレの旦那はオレだからな、うん」
「鬼鮫…別にいいが、貴様はペットの金魚だ」
『え?サメじゃないの?』
「ひどいですよ皆さん…」
可愛そうな鬼鮫さん。
でもまぁ、みなさんなんだかんだで子供飛段のこと気に入ってるみたいですね。
…ホントにS級犯罪者の組織なんですか?
暁、大丈夫でしょうか。
そして飛段は元に戻れるのか!?


To be continued...
2011.12.06

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