sweet,bitter,sweet

今日は2月14日。
大切な人にチョコレートを贈る日。

『はいっ、これ…飛段に』
スミレは頬を染めて、小さな箱を彼に差し出す。
その様子を羨ましげに見る暁のメンバー。
「おっ、これチョコじゃねーかァ?へへっ」
飛段は箱を受け取ると、包みを豪快に破く。
スミレはそんな飛段を笑って見守る。
『飛段も大人だから、ビターチョコにしたんだけど』
「…びたー?」
飛段は手を止める。

「……苦いのかよー!?オレ苦いチョコは食わねーぞ!」
飛段は箱をテーブルに置いた。
スミレは怒りに顔を引きつらせてソファーに腰を下ろす。

『ねぇみんなー、飛段がチョコいらないっていうから食べてくれない?』
「「「…食べるー!!!」」」
小さな箱に男8人が一斉にたかる。
『まぁわたしの手作りだから味は保証できないけどさ』
スミレはえへへと苦笑い。
「手作り」という単語に飛段は反応する。
「手作りだァ?……てめーらどけコラ!!」
「「「うわぁぁ!?」」」飛段はメンバーを追い払ってチョコレートの入った箱を奪い返す。
「これはオレんだ!てめーら何しやがる!!」
『…食べないんじゃなかったの?』
スミレは呆れたように飛段に目をやる。
「…スミレの手作りなら別だ」
飛段は目を伏せながらスミレの隣に腰掛ける。
そして黙って箱を開けると、粉砂糖を纏ったトリュフチョコが。

「ん」
飛段はスミレの方を向いて口を開けている。
『ん?』
スミレが首を傾げると、飛段は顔を赤くする。
「食べさせてくんねーのかよォ!?…つーかこんなこと言わせんな!ったくよー…」
『…しょうがないなぁ……あーん』
「ん…」
スミレは彼の口にチョコをひとつ入れた。

『…ちょっと苦いでしょ?』
飛段は笑った。
「…すっげーうまい」
『…ありがと』
「スミレ、マジ超愛してるぜ」
飛段はそう言ってスミレに顔を近づけてくる。
『ちょ…みんな見てるから…』
スミレはメンバーの目を気にして飛段を止めようとするが。

「そんなのどうでもいいんだよ…」
彼のキスは少し苦くて、唇についた砂糖がほんのり甘かった。
唇が離れると、スミレははにかんだように笑って
『わたしも…大好きだよ』彼に耳打ちした。
それを聞いた彼は満足そうに笑みを浮かべる。

「スミレー、オイラもチョコ食べたいぞ、うん」
二人に水を差すようにデイダラがチョコをねだる。
『…じゃあ一個だけだよ?』
「あーん」
スミレはデイダラの口にチョコを運ぶ。
『ひゃあっ!?』
もう少しでデイダラの口にチョコが入るという瞬間、飛段はスミレを抱き上げた。

「飛段何してんだよ!!うん!」
「そりゃこっちのセリフだ、デイダラちゃんよォ…」
飛段はチョコの入った箱を取り上げる。
「チョコもスミレも、ぜってー誰にも渡さねーからな」
飛段は勝ち誇ったような顔でリビングを出ようとする。

『下ろしてよ、飛段っ!』
「まぁ大人しくしてろよ、な?」
スミレがいくらじたばたしても飛段は離しそうにない。
「チョコの礼に…オマエのこと、オレで一杯にしてやるからよ…な、スミレ」
『なっ…』
スミレの顔はみるみる真っ赤になる。
「ゲハハハハハッ!!」
スミレとチョコを抱えたまま、飛段は自室に入っていった。

「みんな…聞いたか、今の」
「スミレが飛段で一杯になっちまう!!!どうする、うん!?」
「お前も参加してこいよ、ククッ」
「じゃあ遠慮なく」
「いやいや待てよ、うん」「あら、アナタたち、スミレにチョコ貰えなかったの?」

二人と入れ替わるように小南がリビングに入ってきた。
小南の手にはチョコレートの箱が。
「こ、こ、小南ちゃん!そのチョコどしたの!」
「スミレがくれたの、手作りチョコ。上手に作ってるわよ。貰えなかったなんて…可哀そうね」
小南はそう言いながら最後のチョコを口に運ぶ。

「「「あぁぁぁ!!!」」」
男8人の不気味な悲鳴がアジトに響き渡った。



『…ねっ…今、何か聞こえなかった…?』
「…そうかァ?つーか今は…オレに集中しろって…」
『はぁっ……んっ…』


Happy Valentine's Day!

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