echo

ある昼下がり。
飛段の目に、いつもの暁の装束ではなく私服姿のスミレが飛び込んできた。
どうやらどこかへ出かけるようだ。

「おい、どっか行くのかァ?」
スミレが出かけようとしたまさにそのとき。
飛段が声をかけた。
『うん、ちょっとね…』
スミレは言葉を濁す。
「ちょっとねって…どこ行くんだよー?」
飛段はしつこくスミレに尋ねる。
ソファーでごろごろと退屈そうにしている飛段は、
どこかへ出かけたくてしょうがないらしい。

『…カラオケだよ』
スミレは渋々答えた。
まさか日頃のストレス解消のためにひとりでカラオケに行くなんて。言えない。
「…オレも行く!!」
『えー…』
スミレは明らかに面倒くさそうな顔をする。
「おいおい、彼氏を置いて行くつもりかよー!?」
仕方ないなぁ…
『じゃあ早く準備してよね』
「っしゃあー!」

あんなに輝いた目をされたら、断るものも断れないなぁ…
スミレはため息をつきながら飛段が服を着替えるのを待った。


二人はアジトを出て、ある繁華街にいた。
この近くにスミレ行きつけのカラオケ店がある。
今日は二人とも任務ではないので、私服で人混みを歩く。
こんなに堂々と街中を歩くのは久しぶりだから、スミレはとても楽しそうにしている。
「スミレ、迷子になるんじゃねーぞ?」
『わっ』
飛段は突然、スミレの手を握った。
「スミレとデートなんて久しぶりだなァ!」
飛段はスミレの手を引っ張って人混みの中を進む。
『ね、飛段…』
「どうかしたか?」
『お店、逆方向…』
「…」


『ここだよ』
しばらく雑談を交わしながら路地を行くと、目当てのカラオケ店に着いた。
「今日はオレが全部払ってやるからよ」
『…ホントに!?いいの?』
…って、飛段、そんなにお金持ってないんじゃ…
「昨日角都から金パクってきたからな!任せとけ!ゲハハハハハアァ!!」
「…ありがとう」
一瞬ときめいた気持ちを返してほしい、とスミレは思った。
肩を落としたまま、スミレは店に入る。

「いらっしゃいませー…ってスミレ!?飛段もいるのか、うん!?」
「ハァー!?」
受付にいたのは、まぎれもなくデイダラだった。

『デイダラ!?なんでこんなとこいるのよ!?』
「いや、この前旦那と喧嘩して部屋のドア壊しちまっただろ?そしたら角都の旦那がよー、自分で修理代出せて言うもんだから…」
「だっせーなァ、オイ!」
「つーかオマエらこそ何してんだよ、うん?」
デイダラは飛段とスミレを見て不思議そうにしている。
「見りゃ分かんだろ?デートだよ、デート」
『ホントはひとりで来るつもりだったんだけど…飛段がどうしてもって言うから』
スミレの言葉に、飛段は少し拗ねたような顔をしたのが見えた。
「で?何時間にするんだ?」
『とりあえず1時間でいいや。後で延長できるし』
スミレは待ちきれない様子で部屋に向かった。

「じゃあな、デイダラちゃん、オレはスミレとたっぷり楽しんでくるからよォ」
「うっせぇ!さっさと行け、うん!」
飛段の言葉にデイダラはイライラしている。
「あ、支払いはデイダラちゃんに付けとくからな!ゲハハハハハッ!!」
飛段もスミレの後を追って部屋へ向かった。
「飛段のヤロー…」


「スミレけっこー歌うまいんだな」
『ありがと!…飛段も何か歌いなよっ!』
「オマエ、オレの声聞いたらまたオレに惚れちまうかもなァ?」
『またまたー』
スミレは茶化したものの…
彼の歌声に見事に聞き入ってしまった。
低い声が曲によく合っていた。

『飛段…カッコいいじゃん…』
スミレの口からぽろっとこぼれた言葉。
それを飛段は聞き逃すことなく拾った。
「やっぱ言った通りじゃねーか!」
『はっ…わたし、何にも言ってないし!バカっ!』
飛段は拗ねたような顔をしてスミレをじっと見つめる。
『…ごめん、怒ってる…?』
すると彼は表情を一変させ、笑顔になった。
そして、スミレにキスをした。
「バーカ、そんなことで怒る訳ねーだろ?」
『…バカ』
彼はモモコを自分の膝に座るように誘う。
スミレは飛段と向かい合わせに膝に乗った。
いたずらっぽく笑う飛段を、スミレはギュッと抱きしめる。
二人は向かい合ったまま、キスを交わし始める。
室内の薄暗い照明が二人を煽ったせいで、それは次第に熱を帯びていく。
他の部屋から聞こえる雑音に混じって、リップ音が耳に届く。

『んっ…』
キスを交わしながら、飛段はスミレを狭いソファーに寝かせる。
そして飛段の手がスミレの服を捲り上げた。
露わになった白い胸元に、飛段はキスを落としていく。
『こんなとこで…怒られないかなぁ…?』
スミレは不安げに飛段を見上げる。
「黙ってりゃ分かんねーよ…この店、カメラ付いてねーし」
そう言って飛段はスミレの下着を引き上げると、胸を強く揉みしだく。
『はぁっ…ん』
雑音の中、微かに聞こえるスミレの甘い声が飛段をさらに煽る。
突起を舌先で愛撫すれば、スミレは体を捩って悶える。

『やっ…』
飛段の指が腰を伝ってスミレの蕾に触れる。
そこは既に、下着の上からでも分かるほど濡れていた。
「オマエ、案外こーいう所でヤるの好きだろ?」
飛段は下着を脱がせると、スミレの中に指を滑らせる。
『そんなこと…ないっ…』
口では否定するものの、体は正直だ。
スミレは彼の指だけで達しそうなのを我慢するので精一杯だった。

「ハァー…ちょっと早えーけど…」
飛段は自分のズボンに手をやる。
ベルトのバックルが立てるカチャカチャという音がスミレの耳に入った。
「邪魔されんのはぜってー嫌だからな…」
『あぁっ』
飛段は自身をスミレの中へ一気に進めた。
中で動く度に彼女の口からは甘い声が漏れる。
しかしいつもと違い、雑音が多いせいで部屋には響かない。
「あ、いいこと思いついたぜ…」
飛段は怪しく笑うと、テーブルに手を伸ばす。

『何してるの…?』
彼の手には、マイクが握られていた。
飛段はマイクのスイッチを入れると、スミレの顔の横に置いた。
「これでオマエの声がよく聞こえるだろ…?」
『はぁぁっ』
飛段が奥に自身を突き立てると、
スミレの嬌声は薄暗い部屋に響いた。
『やだっ…ダメだってば…』
自分の乱れた声が耳に届き、スミレは羞恥心を煽られる。
止めるように言われても、飛段には止める気配はない。
それどころか、より一層律動を速めていく。
『あっ…ひだっ…』
スミレは飛段の腕を掴んで声を我慢しようとする。
しかし、彼に突かれる度に声は漏れてしまう。
「あんまりでけー声出すと…他の部屋に聞こえちまうぜ…?」
『も…やだぁ…』
快感と、羞恥心を駆られてスミレの目からは涙がこぼれる。

あんまりイジめすぎたかァ…?

「おいおい、泣くなって…」
飛段はスミレの唇にキスを落として一気に腰を速めた。
『んぁぁっ…ダメぇ…飛段っ…』
スミレは最奥を突かれて達した。
「っく…」
飛段も後を追うように、スミレの中で果てた。
「はぁ…はぁ…」
息を切らしながらも、飛段はスミレの額に口付けする。

と、そのとき。
「スミレ、飛段、ジュース持ってきたぞー!うん!…うん?」
「え」
『…あ』
何とも言えないタイミングでデイダラがやって来た。

「よ、よォ、元気かー!?オイ!ハハァー」
慌てた飛段は、スミレの体を隠しながら訳の分からないことをデイダラにまくし立てている。
そのデイダラは目の前に広がる光景に言葉を失っている。
「…元気なのはテメーだろ、うん」
デイダラは頭を抱える。
『ご…ごめん…』
飛段の下になったまま、スミレは謝った。
「スミレもスミレだっ!!謝る前にさっさと離れろってんだよー!!!!」
デイダラは頭を抱えたまま部屋を出て行った。

「…なんだァ?デイダラちゃん…」
『とりあえず…お店出よっか…?』
「お、おう…」
二人はそそくさと服を整えると、受付に多めに金を置いてアジトに戻った。


END

2012.01.17

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