目を開けると、見慣れた銀髪が目の前で静かに揺れていた。噎せ返るような戦場の血の匂いの中に安堵さえ抱くのは、もう既に私が人ではないものに成り下がっている故にだろうか。刹那、轟音。俄、断末魔。

「、なぁ銀時……」
「おー生きてやがったか」

しぶといヤツだなテメーも。乾いた笑みには返す言葉も見つからず、かといってその思いを咀嚼することも出来ずにゆっくりと瞬きをする。
よいしょ、と私を背負い直した銀時は、足元に溢れ転がる屍を器用に避けながら相も変わらず歩みを進める。霞んだ視界を見下ろせば虚ろにこちらを見つめる白濁色の瞳に胃の中のモノがせり上がるようだった。ああ、無情だ。

「どうした。ヤケに大人しいじゃねーか」
「……見えないんだ、もう……何も」

ピタリと歩みが止まる。血の匂いを運ぶ風が止まった。ゆっくりと、振り返る、気配に口許を緩める。多分怒っているのであろうことは分かった。けれど、こんな状況下でそんなツマラナイ冗談を口に出来るほどのユーモアは生憎持ち合わせていない。
文字通り、何もない暗闇に、独り、取り残された。その上世界の見納めは、さながら地獄絵図で。

「死にたくなったよ」

もう二度と、お前の姿が見れないと思うと、心底死にたくなった。柄にもなく涙して、止まったはずの風が雫を浚うのをただ感じていた。

2011/04/15 06:06





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