カナリアが鳴いた
▼キス
(11さいルッチ×18さいジャブラ)


 キスの味はレモンの味だと言ったのはどこのどいつなのだろうか。俺の初めてのキスはレモンの味なんてしなかったってのに、嘘言いやがって、ふざけるな。
 初めてのキスは、鉄の味がして、甘くもなければ酸っぱくもなかった。それに、相手は可愛い女の子なんかじゃなくて、年下の将来有望のルッチだった。これが事故ならノーカンだったのだが、事故ではなく、あいつがしたくてしたのだ。こちらの了承も得ずに。鉄の味がしたのは、あいつがわざと俺の唇を噛んだからだ。思い切り噛みやがって、まだヒリヒリする。
 あいつの顔を思い切り殴って、言葉にならない声を発して逃げてきたけれど、すごい勢いで追っかけてくるので今は身を隠している。あいつはかくれんぼが苦手だから、少しすれば諦めて帰るだろう。


「おい」
「ギャアアアアアアア」
「うるせぇ」


 諦めて帰るどころか真後ろにいて、俺の耳元で声を掛けてきやがった。なんでどうして、いつも年少組でかくれんぼをする時はまったく見つからずイライラして当たりに来ていたというのに。どうして見つかったんだ。


「どうして見つかったのか不思議そうな顔をしているな」
「あ、あたりめぇだ」
「ふん、お前を見つけられないわけがないだろう」
「意味わかんねぇな」
「お前の血の匂いを目印にここへ来た」


 舌なめずりをして俺の唇を見た。正確には、唇から出ている血だが。右手を伸ばして唇に触れようとしてきたのでその手を掴んだら眉間の皺を深くさせた。ポーカーフェイスを気取ってはいるが、自分では隠しているつもりらしいが、こういう時は顔に出やすい。


「もう一度させろ」
「…本気で言ってんのかよ」
「こんなこと、俺が冗談で言うと思うか」
「いや、言わねぇよな」
「もう噛みつかないと約束してやろう」
「なんで上から目線なんだよ」
「うるせぇ。いいからさせろ」
「理由を言えよ」
「んなもんねぇ。したいからするだけだ」
「俺じゃなくたっていいだ狼牙」
「お前じゃなきゃダメなんだよ」
「随分と可愛らしいこと言うじゃねぇか、子猫ちゃん」


 掴んでいた右手を引いて、強引にキスをした。どうしてか、鉄の味ではなく、甘い味がした。



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2014/04/25 08:26
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