カナリアが鳴いた
▼スキップ
 カリファはご機嫌なのか、朝からずっとニコニコしている。さっきは、スキップまでしていた。小さい頃から知っているが、こんなカリファを俺は見たことがなくて、少し戸惑っている。
 ブルーノ関連かと思ったが、そうではないらしい。これは、ブルーノを見てそう思うだけで、実際はブルーノ関連なのかもしれない。
 ブルーノは、いつもの様に新聞を読んでいる。いつのも無表情のせいで何を考えているかわからない。ちらりともカリファを見ようとしないので、これはもしかしたら喧嘩でもしているのか、と考えを巡らせてみるけれど、喧嘩をしているなら、カリファがこんなにご機嫌なわけがない。スキップまでしているのだから。
 鼻歌まで歌いだして、少しだけ背筋が凍った。


「おい、ブルーノ」
「どうした」
「どうしたじゃねぇだ狼牙!カリファはどうしたんだ」
「ああ、カリファか」
「随分と呑気じゃねぇか」


 新聞から目を離さず、こちらに見向きもせずに冷静に返事をした。こいつが焦っているところを見ることが少ないから、あまり気にならないと言ったら気にならないが、不満はある。


「別にどうもしてないだろ」
「お前が原因かと」
「なんでもかんでも俺のせいにするのは止めてくれ」
「でも、だいたいお前のせいでああなるじゃねぇか」
「そうか?」
「あいつがスキップしてるところ、初めて見たぞ」
「そりゃ、おめぇがいるところでしてねぇだけだろう」
「なんだ、初めて見るんじゃねぇのか」
「よく見る」
「そ、そうなのか」


 自分の知らないところで自分の知らないことが起こっているというのは、こんなに悲しい気持ちになるのか。うんうんと唸っていると、ブルーノが声を出して笑った。その声は、俺にしか聞こえないくらいの小さな声だ。


「あんだよ…」
「そんな落ち込むな」
「妹の知らない一面を知って複雑な気持ちだぜ…」
「はは、成長してんだ」


 カリファがご機嫌な理由を、きっとブルーノは知っているし、ブルーノが何かをしたからカリファはご機嫌なのだろうと思った。惚気に付き合う気はないので、席を立った。二人きりにしてやった方がいいに決まっている。
 恋って奴は、俺にはまだ難しい。



2014/07/08 02:14
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