カナリアが鳴いた
▼抑えられない気持ち
 男なのに男に恋をするなんて馬鹿らしいと思った。それなのに、恋した相手は自分に対して恋をしていると言う。馬鹿らしいと思っていたのに、この仕打ちったらない。両想いなのに好きだと言えないのは、世間体を気にしてなのか、恥ずかしいからなのか。たぶん、後者だろう。
 場所を弁えずに接触してくるルッチは、きっと俺の想いに気付いていてこういうことをしてくるのだ。殴り合いの喧嘩になったら大変だ。触れる度に心臓は跳ねるし、ルッチは野性的な瞳になる。食べられてしまいそうだ、と何度思ったことか。
 今日は仕事が無く、非番なので部屋でごろごろして過ごすことに決めた。体も心も頭も休ませるべきなのに、頭ではルッチのことばかり考えてしまう。はぁ、とため息が漏れた。
 控えめなノックが聞こえたので返事をしたのに一向に部屋に入る気配がない。仕方なく、寝転んでいた体を起こして、ドアへと向かう。開こうとした瞬間、ドアが開かれた。


「いって」
「すまん」
「…ルッチ、おめぇ任務じゃなかったのか」
「終わらせた。」
「優秀なこって」


 憎まれ口を叩いてしまう自分を叱ってやりたいが、どう頑張っても素直になることが出来ないのだ。ルッチは先程、俺が寝転んでいた場所に座った。


「それにしても、やけに早く終わらせたな」
「お前に会いたかった」
「は?」
「もう抑えることが出来ねぇんだ。」
「へぇ」
「おとなしく俺に喰われろ」
「俺がおとなしくすると思ってんのかよ」
「まさか。」
「だったらよ、」
「ジャブラ」
「…あんだよ」
「好きだ」


 ルッチの真ん前に座った俺の膝に手を置いて、顔を近づけてきた。あ、キスされるな。なんてぼんやり考えていたら、ルッチのふくよかな唇が俺に触れた。喰うだなんて言っていたくせに、随分と優しいキスをするもんだ。少しだけ、震えているのは気のせいではないろう。


「返事も聞かねぇでこんなことすんなよ」
「嫌なら避けることが出来たんじゃねぇか」
「……」
「抑えられねぇって言っただろ。お前も一緒だと思ったが?」
「…そういうことにしてやるよ」


 二回目のキスは、触れるだけの可愛いものじゃなくて、噛みつくような激しいものだった。よく、今まで我慢したもんだなぁ、と場違いなことを考えていたら、唇を噛まれて血が出てしまった。こいつみたいに、欲望に忠実に生きていればもっと楽なんだろうなぁ。


2014/05/26 02:58
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