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カナリアが鳴いた
▼紅い頬
皿洗いを手伝うウソップの横顔を盗み見る。厚い唇を尖らせながら、ルフィにおやつを半分食べられたと文句を言っている。言っている最中も手を止めることなく、次から次へと文句と要望を紡ぐ厚い唇を、どうにか塞いでしまいたい衝動に駆られる。
俺とウソップが恋人同士になってからかなりの月日が流れたが、先に進みたい俺の気持ちがわかってはいるものの、まだ先に進むのが怖いウソップのせいで、キスも数えられるくらいしかできていない。キスよりももっと凄いことをしたいのだ、と告げたら頬を紅く染めて持ち前の逃げ足の速さを駆使して、この狭い船の中を逃げ回った。最終的にアホ剣士のいるトレーニングルームに隠れていたのを知り、その日の夕飯はあいつの苦手なキノコ料理にしたのは言うまでもない。食べ終わるのが最後になるので、それまで一緒にいれると考えていたのは、内緒だ。
下心全開の俺の隣でいろいろな表情を見せるこいつは、今も厭らしいことを考えている俺に気付いていないようだった。少しぐらいこっち見たらどうなんだ。
「サンジ?」
「あん?」
「話聞いてたか?」
「あー、聞いてねぇ」
「ぬぅあんだとう!?」
「わりーわりー」
「思ってないだろ、お前」
厚い唇を尖らせながら拗ねた表情を作る姿についつい笑ってしまった。同時に、愛しさも込み上げてきて、俺は体を斜めに屈ませ、ウソップの鼻に当たらないように顔も斜めに傾け、厚い唇のキスをした。唇が触れる前、驚いた顔をしたウソップがギュッと目を瞑ったのが目に入った。触れるだけのキスにだってそんな顔をするのだ、先に進めるのはまだまだ先だろう。
唇を離したときに見えた顔は、頬を紅く染めた、リンゴのような顔だった。
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2014/04/24 22:11