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カナリアが鳴いた
▼早まる鼓動
ドキドキと先程から鼓動が脈打っている。それも、物凄い速さでだ。俺をこんな風にするのは、目の前にいるこの男だけだ。
髪を後ろで束ねてすっきりとさせ、いつも通りの黒い服を着て、俺を壁際まで追い込んで首筋に咬みついた。激しい痛みではなく、やんわりとした痛みで、感覚をおかしくさせる。そんな成分がこいつの唾液から出ているのではないかと思えるほど、自分の体が何かに侵されていく。
「お、い」
「なんだ」
「やめろよ」
「悪いな。人の言うことを聞く気はないのだ」
「クソ猫…」
「少し黙れ、野良犬」
脇腹を触られて体が飛び跳ねる。その反応にニヤリと笑ったルッチが、恐ろしく綺麗に見えて、自分の目を潰してしまいたくなった。こいつに対して綺麗だなんて表現を使う日が来るとは思わなかった。
鼓動はドクドクと脈打って、このまま爆発してしまうのではないかと思った。ルッチが心臓の上に手を置いて、子供の様な笑顔を見せて、くらりとした。立っていられなくなり、膝ががくんと折れた。
ルッチが俺を支えて、唇に口付けると、抱えてソファーに寝転がらせた。
「随分、心臓が早く動いてるじゃねぇか」
「自分の意志でどうにかできるモンじゃねぇだろ」
「顔も赤い。そんなに興奮したか?」
「どうかしちまったみてぇだな」
「ふ、どんなお前だって変わりねぇだろ」
「なんだぁ?気持ちわりぃな」
「ここは素直に受け取っておくべきところだろう」
「へいへい」
覆い被さってきたルッチの首に腕を回して引き寄せる。鼻と鼻がぶつかって、くすぐったい。鼓動は、早さを増している。
2014/07/01 01:49