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カナリアが鳴いた
▼愛しい人
ベッドに横になっている彼の髪をそっと撫でる。いつもはワックスでがっちり固めているけれど、風呂上りには固められていた髪が解かれてサラサラになるのが私は好きだ。サラサラの髪は指通りがよく、羨ましく感じる。私の髪よりも艶があり、サラサラだなんて嫉妬してしまう。
彼の仕事が終わる頃、私は自分の部屋を出て彼の部屋に向かう。彼の仕事場から彼の部屋までと、私の部屋から彼の部屋までは、私の方が近いから、仕事が終わる頃に出れば少し早目に着き、いろいろと準備ができる。軽食を作って迎え入れると非常に喜んでくれる。その優しい笑顔は、人を殺すようには見えない。
「カリファ」
「なぁに」
「自分だけ髪を触るのは狡くないか」
「え?」
「俺にもお前の髪を触らせてくれ」
「ふふ…、気が済むまでいくらでも」
彼の大きい手が私に触れる。水仕事をしているせいで手が荒れているから、あとでクリームを塗ってあげよう。彼が髪を梳く度に口角を上げるものだから、私の口角も同時に上がってしまう。
「ブルーノ」
「なんだ」
「愛してるわ」
「ああ、俺もだ」
この時間だけ、私たちは普通の人と変わらない時を過ごす。この時間がずっと続けばいいとは思わない。私たちの普通に戻って生活して、そこで小さな幸せを見つけるのだ。
2014/05/24 22:58