カナリアが鳴いた
▼相談
 相談があるんだ、と言って酒を持って部屋に入ってきたジャブラは二人掛けのソファに胡坐をかいて座っている。部屋に来るのは気まぐれだが、今日は気まぐれの日なのだろう。酒が入っているのが一番の原因か。酒を飲みながら紡がれる言葉の言っていることの半分も俺の頭には入ってこない。それに対して申し訳ないとも思わない。こいつはもう少し俺に気を遣うべきなのだ。
 俺がこいつを好きだと自覚したのは10代半ばだ。その想いを告げたことなど一度もないし、周りに悟られていないという自信もある。周りに悟られていないのだから、こいつが気付いているわけなどないのだが。この鈍感が俺の気持ちを気付くわけがない。
 司法の塔にはもっと女の子を増やした方がいい、それだけは聞き取れた。


「なあ、きいてるか」
「ああ」
「聞いてるように見えねぇな」
「お前がそう思ってるだけだろ。俺はちゃんと聞いてる」
「お前と飲む酒はつまらねぇな。酔いもしねぇし」
「量が違うだろ。お前はここに来る前から飲んでたんだろうが」
「ああ、そうだったなー」
「呑気だな」


 酒を煽りながらぐだぐだと要望を話しているが、この部屋に来た当初の目的を話す気はまだないらしい。相談というのは気になるが、このままわけのわからない話を聞いているのも悪くない。他愛もない話ができるような関係に、少しだけ憧れを抱いている。


「…相談なんだけどよ」
「なんだ」
「今までなんとも思っていなかった奴を好きになったらどうすればいいと思う?」
「…なぜそれを俺に聞く」
「お前以外に聞けそうな相手がいねぇからな!」
「恋愛相談なんて俺には無理だ」
「そう言うなよリーダー」


 都合のいい時だけそう言っておだててくるのは如何なものか。少し離れていたところに座っていたのに近づいて身を乗り出してきた。よく俺に恋愛相談できたものだ。俺がずっと想っているのにも気づかず、困った顔をされても、俺が困ってしまう。


「好きな相手って誰だ」
「お前」
「…は?」
「なんかさー、俺、お前のこと好きみたいなんだよな」
「相談というよりは告白だな」
「いやいや、相談だろ」
「告白だろ」
「お前のことだから、お前に聞くしかない」
「素直だな」
「酔ってるんだよ」


 酒瓶をテーブルに置いて立ち上がり、俺に近付いてくる。肘置きに手を置いて、膝を椅子の隙間に挟ませ、顔を近づける。


「この相談するために、すげぇ酒飲んだ」
「忘れたなんて言わせねぇからな」
「言いそうだな」
「言うな。忘れるな。覚えてろよ」


 ゆっくり屈んできているのを首の後ろに腕を回して引き寄せる。触れた唇からは酒の味がした。



2014/05/21 23:24
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